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話題の肥満治療注射薬「ウゴービ」について

[2024.02.01]

 2023年2月にブログで報告した抗肥満薬「アライ」(オルリスタット)に続き、2023年11月に抗肥満薬として持続性GLP-1受容体作動薬「ウゴービ」(セマグルチド)が厚生労働省により薬価収載されました。「ウゴービ」は、「アライ」と異なり、抗肥満薬として保険適用(医療機関での診察を必要とする)注射製剤です。
 「ウゴービ」は抗肥満薬ですが、肥満という病気の治療薬であり、肥満の減量薬ではありません。そのため、痩せる目的で使用するお薬ではありません

 対 象:高血圧、脂質異常症、2型糖尿病のいずれかを有し、食事療法・運動療法を行っても十分な効果が得られず、以下に該当する場合に限る。
 ・ 体格指数(BMI)27以上で、かつ、2つ以上の肥満に関連する健康障害※を有する
 ・ 体格指数(BMI)35以上
 ※ 肥満に関連した健康障害:高血圧、脂質異常症、耐糖能異常、高尿酸血症、冠動脈疾患(狭心症や心筋梗塞)、脳梗塞、非アルコール性脂肪肝、睡眠時無呼吸症候群、月経異常、変形性股・膝関節症、慢性腎臓病の11項目
 注 射:「ウゴービ」0.25mgから開始し、2.4mgを週1回皮下注射(自己注射可能)
 作 用:「ウゴービ」はGLP-1と呼ばれるホルモンが作用する部位(受容体)に持続的に結合することにより、GLP-1に類似した作用を引き起こします。GLP-1は、食事に応じてブドウ糖を細胞内に取り込む働きのあるインスリンを分泌させます。また、脳の満腹中枢に直接作用すると同時に、消化管の食べ物を停滞させて、満腹感を生み出します。それだけでなく、脂肪細胞に作用して、エネルギー代謝を亢進させ、エネルギー消費を増大させます。
 長 所:米国、欧州で広く使用されています。そのため、多くの知見があり、有効性と安全性が確立されています。
 短 所:一部の人で悪心や下痢などの消化器症状が認められますが、多くはありません。一方で、肥満治療を目的とした人たちでの長期使用による副作用や危険性が分かっていません。特に、米国の専門家の間では無症候性慢性膵炎から膵臓がんが生じる危険性について警鐘を鳴らしています。
 アジアを含む全世界、約2,000名が参加した臨床試験で、68週間にわたる週1回2.4mgウゴービ(セマグルチド)の皮下注射により、平均で14.9%の体重減少を認めました(添付参照)。

 ツノクリでは、皆さんの痩せたいという気持ちを応援しますが、健康であれば、お薬を使って痩せる必要はありません。一方、とても太っていて、肥満に関連した重度の病気があれば、病気の発症予防や悪化防止を目的に、体重減少が期待できるお薬を使うのは良いことだと考えています。そういった患者さんにとっては「ウゴービ」は素晴らしいお薬だと思います。
 なお、2024年2月現在、「ウゴービ」を保険診療で処方する際の「最適使用推進ガイドライン(案)セマグルチド(遺伝子組換え)」が厚生労働省から発表されています。ツノクリでは、ガイドラインに準じた施設要件を満たしていないため、処方することができません。「ウゴービ」による治療をご希望の方は、受診する各医療機関にお問い合わせください。
 繰り返しになりますが、「ウゴービ」は抗肥満薬ですが、肥満と呼ばれる病気の治療薬であり、肥満の減量薬ではありません「ウゴービ」を痩せる目的で使用することにより、本当に必要な患者さんのもとに薬が届かなかったり、健康被害を受けた際に公的機関の補償などを受けられなかったり、社会だけでなく個人にとっても不利益があります。皆さんのご理解とご協力に期待しています。

202401ウゴービ肥満患者図

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