健康診断で血圧が高いと言われた方へ
※ 気持ちが入りすぎて長文となりました。お時間のある際にご一読ください。
2025年6月に、東京大学病院と三重大学病院のグループから、我が国で52万人分の診療報酬および健康診断データを利用して、年齢層別に高血圧症(130/80mmHg以上)治療の開始時期と、心臓病や脳血管病の発症の関連について検討した論文が報告されました(Prognostic impact of the timing of antihypertensive medication initiation for hypertension detected at health screening on primary prevention of adverse cardiovascular events: Age-stratified real-world data analysis)。この報告では、年齢層別に、健康診断で高血圧を指摘されてから、お薬による治療を開始するまでの(高血圧未治療)期間を1から2年と2年以上に分けて検討し、40歳以上では、高血圧治療が1年以上遅れると心臓病や脳血管病の発症が20-30%程度増え、また2年以上遅れると死亡率が50-60%程度増えることがわかりました。
この結果は、40歳以上の方が、健康診断で高血圧を指摘された場合には、できるだけ早くお薬による治療を開始したほうが良い可能性があることを示しています。
ツノクリでは、高血圧を指摘された患者さんが、将来、心臓病や脳血管病にならないよう、食事や運動の指導をしながら、高血圧症と上手にお付き合いする方法を提案します。そのなかで、お薬による治療をしたほうが良いと考えられた場合、お薬を飲むことを提案します。皆さんにとって大切なことは、お薬を飲むかどうかではなく、できるかぎり長い間、元気で過ごせることだと思っています( → 高血圧症について)。
このページを見ている方の多くは、自分や自分の大切な人が、血圧が高いと知っていても医療機関に受診していない人かもしれません。そのような方々は、血圧が高いと言われても、日々の生活に支障がないため、つい放置してしまう一方で、健康診断のたびに高血圧と言われると不安になる人も多いと思います。
血圧が高いと指摘されたとき、まず大切なのは「高血圧についての正しい知識」を持つことです。ツノクリでは、皆さんが「高血圧についての正しい知識」に基づいて、高血圧治療に向き合っているのであれば、アドバイスをしたうえで、皆さん自身の決めた治療方針を大切にしたいと思っています。決して、高血圧ならお薬を飲まなければならない、というわけではありません。
高血圧についての正しい知識
その1. 高血圧症の診断基準
上の血圧(収縮期血圧)と下の血圧(拡張期血圧)の両方、もしくは、いずれかが、下記の数値より高い場合に、高血圧症と診断します。
・ 診察室血圧:140/90mmHg 以上
・ 家庭血圧(自宅血圧):135/85mmHg 以上
その2. 健康診断で血圧が高いと言われたら
おすすめ1. 家庭血圧を測定してみましょう
多くの方で、医療機関や健康診断時の血圧が、家庭血圧より高いことがわかっています。そのため、健康診断での血圧が高かったとしても、それだけで高血圧症と診断されるわけではありません。大切なのは自宅での血圧(家庭血圧)です。そのため、自宅で朝と夜に毎日測ってみましょう。季節や天気などによる変化も意識しながら、一定期間、記録をつけていくと、あなたの本当の血圧(家庭血圧)が見えてきます。家庭血圧の平均値が 135/85mmHg を超えている場合、そこで初めて「高血圧症」と診断されます。
おすすめ2. 日々の生活を変えることで血圧が下がるか試してみましょう
① 塩分とお酒の量
塩分の摂取量が多いと、血圧が高くなることは良く知られています。一般的な日本人では、塩分を減らしても困ることはない場合が多いことが分かっています。ただし、極端に減らすと、日本人が感じる「おいしさ」がなくなります。
ツノクリでは、高血圧の方々には、塩分摂取量ができるだけ少なくなるように応援しています。まず、麺類とみそ汁のスープを我慢することがスタートです。
また、飲酒は、適量なら構いませんが飲み過ぎると高血圧を引き起こします。お酒を飲む量が増えると、一緒に食べるおかず(塩分摂取量)が増えることが分かっています。
② 運動の量と頻度
散歩などの有酸素運動をすると血圧が下がることが分かっています。一日40分間、週に3-4日間を目安に、無理のない範囲での運動がお勧めです。
③ 理想的な体格
食事や運動を上手に調整して、太りすぎないようにすることは、血圧を下げるためにとても大切です。理想的な体格(適正体重)は、次の計算式で求めることができます。
適正体重(kg)= 身長(m) × 身長(m) × 22
たとえば:
身長 150cm → 約 50kg
身長 160cm → 約 56kg
身長 170cm → 約 64kg
太っているからと言って、急いで体重を落とす必要はありません。理想的な体格に近づき、保つためには、栄養バランスのよい食事と、無理のない運動を継続することが大切です。
④ タバコについて
喫煙すると高血圧症になりやすいことが知られています。
ツノクリでは、禁煙を強くお勧めしています。タバコを吸う人にとって禁煙はとても難しいですが、失敗しても失敗しても、何度でも挑戦し続けて下さい。ツノクリも、皆さんの禁煙を応援しています。
その3. (困ったら)その道のプロ(医師)に相談しましょう
信頼できる、また、気の合う医師を見つけて、相談してみましょう。
自分や自分の大切な人の健康は、かけがえのないものです。近隣の人たちや友人の助言も大切ですが、助言してくれる皆さんが「高血圧についての正しい知識」を持っているとは限りません。少なくとも、あなたの血圧の値を聞かずに、助言してくる人を頼りにしてはいけません。なぜなら、そもそも、あなたは高血圧症ではないかもしれません。
また、高血圧は長い付き合いになることから、専門知識があることはもちろん、「この人なら話しやすい」と思える医師を探すのも大切だと考えています。
