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高血圧症について

 

はじめに

 高血圧症は、日本人にとって最も身近な生活習慣病で、脳卒中や心臓病を引き起こす原因になります。日本人の死因は、がんが1位ですが、脳卒中と心臓病で亡くなる人の数を合わせると、がんで亡くなる人の数に匹敵します。多くの人が、がんによって亡くなってしまうことを恐れますが、実際は、それと同じくらいの人が、高血圧が関わる病気で亡くなっているのが現実です。

 日本人の4,300万人(約3人に1人)が高血圧症とされていますが、自覚症状が無いため、放置されていることも少なくありません。4300万人の高血圧患者さんのうち、3人に1人は高血圧症に気が付いておらず、10人に1人は高血圧症だと知りながら治療をしていません。高血圧症の患者さんは、まず、自分が高血圧症であることを知り、そして、治療することが大切です。

 ツノクリでは、高血圧症の患者さんが、将来、脳卒中や心臓病にならないよう、食事や運動の指導をしながら、高血圧症と上手にお付き合いする方法を提案します。そのなかで、お薬を飲む必要があると考えられれば、お薬を飲むことを提案します。皆さんにとって大切なことは、お薬を飲むかどうかではなく、できるかぎり長い間、元気で過ごせることだと思っています。

 目 次

 高血圧症の診断と治療について

Q1.高血圧はどのように診断しますか?
Q2.高血圧は治療する必要がありますか?

 血圧測定の仕方について

Q3.どこで血圧を測定すれば良いですか?
Q4.いつ、どのように血圧を測定すれば良いですか?
Q5.どのような血圧計を使えば良いですか?

 高血圧症の管理と治療について

Q6.どうして高血圧症になるのですか?
Q7.2次性高血圧症の原因にはどのようなものがありますか?
Q8.血圧が変動するのですが、大丈夫でしょうか?
Q9.不整脈があるのですが、血圧を正確に測定できますか?
Q10.高血圧症にはどのような治療がありますか?
Q11.日々の生活を変えることで血圧は下がりますか?
Q12.いったんお薬を飲みはじめたらやめられない、本当ですか?
Q13.高血圧に「特定保健用食品(トクホ)」は効果がありますか?
Q14.血圧を下げるお薬にはどのような種類がありますか?
Q15.高血圧を下げるお薬にはどのような副作用がありますか?
Q16.血圧の治療目標値はありますか?
Q17.高齢者の高血圧症にも治療は必要ですか?
Q18.血圧が下がりすぎても大丈夫でしょうか?

 高血圧症の診断と治療について

Q1.高血圧はどのように診断しますか?

 

 上の血圧(収縮期血圧)と下の血圧(拡張期血圧)の両方、もしくは、いずれかが、下記の数値より高い場合に、高血圧症と診断します。
 ・ 診察室血圧:140/90mmHg 以上
 ・ 家庭血圧(自宅血圧):135/85mmHg 以上
 ただし、血圧には、季節、日々、一日のうちで変動があります。測定した血圧が上記より高いからといって、必ずしも高血圧症とは診断しません。大切なことは、自宅で、季節、日々、一日のうちで繰り返し測定することです。そして、その血圧の平均が、135/85mmHg以上であれば、高血圧症と診断されます。

Q2.高血圧は治療する必要がありますか?

 はい、治療する必要があります。
 一般的には、血圧が高くなれば高くなるほど、脳卒中と心臓病の発作が増えるとされています。例えば、40歳から64歳の日本人を対象とした2012年の調査によると、血圧が180/110mmHg以上の人は、120/80mmHg未満の人と比べて、脳卒中と心臓病の発作を起こす割合が9倍になっていました。
 一方、幸いにも、わが国の平均血圧は徐々に低くなっており、脳卒中と心臓病も減っています。その理由として、健康診断などで自分が高血圧症であることに気が付いたり、食事や運動などに気を遣うようになったり、血圧を下げるお薬を飲む人が増えたことなどが考えられています。高血圧症の患者さんは、まず、自分が高血圧症であることを知り、そして、治療することが大切です。

血圧測定の仕方について

Q3.どこで血圧を測定すれば良いですか?

 診察室と自宅の両方で測定するのが理想的ですが、自宅で測定した血圧が、いつもの血圧(家庭血圧)という意味で大切です。
 自宅で測定した血圧は、家庭血圧と呼ばれます。一般的に、家庭血圧は、診察室血圧に比べ収縮期も拡張期も5~15mmHg低いことが知られ、基準値(→Q1)が5mmHg異なるのもそのためです。

Q4.いつ、どのように血圧を測定すれば良いですか?

 自宅で、毎日、朝と晩に上腕式の自動血圧計(→Q5)を使って測定することをお勧めします。

  1. <家庭血圧を測定する時間>
    1. ✓ 朝の血圧:朝起きて、トイレに行き、1分間以上安静にして(朝食前に)測定します
    2. ✓ 晩の血圧:寝る直前に、1分間以上安静にして測定します
  2. <家庭血圧を測定する状態>
    1. ✓ 静かで温かい部屋の中で、座って測定します
    2. ✓ 1分間以上安静にした後に、会話をせずに測定します
    3. ✓ 煙草を吸った後、お酒を飲んだ後、またはお風呂に入ってすぐに測定すると正確に測定できません

Q5.どのような血圧計を使えば良いですか?

 日本の会社が製造する上腕式(腕で測定する)電子血圧計をお勧めします。
 ツノクリがお勧めする家庭用自動血圧計の特徴は、①オムロンもしくはテルモ製 ②上腕式で巻きやすい腕帯 ③大きな画面とシンプルな機能の3つです。具体的には、以下の自動血圧計をお勧めしています。実際、ツノクリでも、同じ型の上腕式自動血圧計を使用しています。

オムロン上腕式血圧計

HCR-7106

Amazonにて \8,500-前後

※日本高血圧学会のサイトでも紹介しています
https://www.jpnsh.jp/com_ac_wg1.html)。

 高血圧症の管理と治療について

Q6.どうして高血圧症になるのですか?

 高血圧症の原因の多くは、はっきり分かっていません。
 高血圧症のほとんどは、はっきりした原因のない「本態性高血圧症」です。ただし、高血圧症の患者さんの中には、別の病気で血圧が高くなる人もいます。この高血圧症は、2次性高血圧症(→Q7)と呼ばれ、若い人や極端に血圧が高い人などに見られることがあります。

Q7.2次性高血圧症の原因にはどのようなものがありますか?

 2次性高血圧症の原因には、主に2つの病気があります。
 ① 内分泌性高血圧症
 血圧を上昇させるホルモンの量が増えることにより、血圧が上昇します。なかでも、高血圧症の原因の5%前後を占めるとされる原発性アルドステロン症と褐色細胞腫を調べるのが一般的です。原発性アルドステロン症も褐色細胞腫も、左右の腎臓の上にある、3~4cm程度の副腎と呼ばれる臓器で、血圧をあげるホルモンが過剰に産生される病気です。原発性アルドステロン症では、副腎の外側の皮質と呼ばれる部分から、体内に塩分を保持するアルドステロンが過剰に分泌されます。一方、褐色細胞腫では、副腎の中心にある髄質と呼ばれる部分から、動脈を収縮させるカテコラミンが過剰に分泌されます。褐色細胞腫の患者さんの3~4割は、家族内で同じ病気を持っている場合があります。
 このような内分泌性高血圧症が疑われた際には、まず、血液中のホルモンの量(濃度)を調べます。そして、ホルモンの濃度が高ければ、精密検査(CTや超音波検査など)を行います。
 ツノクリでは、特に若い人や極端に血圧が高い患者さんには、内分泌性高血圧症を鑑別するためのホルモン検査を受けることをお勧めしています。一般的な血液検査と異なり、血圧を変化させるホルモンの濃度は、体位などによって変化する特徴があります。そのため、正確な測定のために、クリニック内で30分間安静にした後に採血をすることをお勧めしています。
 ② 睡眠時無呼吸症候群


 夜、寝ている間に呼吸が止まったり(無呼吸)弱くなったりする(低呼吸)ことによってリラックスして寝ることができず、日中の血圧が上昇します。睡眠時無呼吸症候群が疑われた際には、まず、夜間に睡眠時無呼吸症候群簡易検査(アプノモニター)と呼ばれる機器を自分で取り付けて、寝ている間の無呼吸や低呼吸の程度を調べます。睡眠時無呼吸症候群の患者さんは、血圧を下げるお薬が効きにくいとされているため、睡眠時無呼吸症候群の治療を優先する場合があります。そのため、ツノクリでは、太っている男性や日中うとうとしてしまう人が高血圧症を合併している場合には、睡眠時無呼吸症候群の簡易検査をすることを提案することがあります。
 ほかにも、頻度は少ないものの、様々な病気が2次性高血圧症の原因となりえますが、一般診療では分からない場合が多いです。

Q8.血圧が変動するのですが、大丈夫でしょうか?

 誰もが、年齢、季節、天候、毎日の生活、不整脈などによって血圧は変動します。
 ただし、極端な血圧変動は、脳卒中と心臓病をより起こしやすいとされています。お薬を飲んでいる場合には、お薬の種類や飲む季節や時間を変更することにより、変動を少なくすることができるかもしれません。ただし、それらの工夫をしても、日内変動をしっかりと調整することは難しいとされています。
 ツノクリでは、多少の血圧変動はやむをえないと考えていますが、寒い季節だけ血圧のお薬を追加したり、お薬を寝る前に飲んでもらったりと、血圧の変動を小さくするための提案をすることもあります。

Q9.不整脈があるのですが、血圧を正確に測定できますか?

 不整脈の種類にもよりますが、血圧を正確に測定するのは難しいです。
 血圧は、心臓から動脈に送り出される血液の圧力を測定します。不整脈があると、送り出される血液の量が変化するため、その圧力(血圧)も変わります。そのため、不整脈の患者さんでは、血圧測定を毎回2度測定することお勧めしています。2度の血圧値が大きく離れていた時には、さらにもう一度測定して、2つから大きく外れた血圧値を除きます。たとえ不整脈があっても、毎日、自宅で血圧測定していれば、おおよその血圧は分かります。家庭血圧測定の目的は、正確な血圧値を知ることではなく、自分の血圧がどの程度かを知ることです。

Q10.高血圧症にはどのような治療がありますか?

 まずは、日々の生活(→Q11)を見直します。それでも血圧が高い状態が続くようであれば、お薬(血圧を下げる薬→Q10)を飲むのが一般的です。それは、ツノクリでも同じです。

Q11.日々の生活を変えることで血圧は下がりますか?

 はい、下がります。
 高血圧症は生活習慣病の一つです。生活習慣病には、肥満、糖尿病、脂質異常症などが含まれ、日々の生活のスタイルを変えることにより、高血圧症だけでなく、ほかの生活習慣病も同時に良くすることができます。生活のスタイルを変更することは、お金もかからず安全で、お薬を飲み必要もありません。ただし、何年も続けてきた生活スタイルを変え、さらにそれを続けることは、とても難しいことも分かっています。
 ① 塩分の量について
   塩分の摂取量が多いと、血圧が高くなることは良く知られています。日本人の塩分摂取量は、男性で11g前後、女性で9g前後(2017年統計調査)ですが、高血圧症の患者さんでは一日6g未満が推奨されています。一般的な日本人では、塩分制限食によって、塩分を減らし過ぎても困ることはない場合が多いこととが分かっています。ただし、食事から塩分を極端に減らすと、日本人にとってはおいしくなくなります。
 ツノクリでは、高血圧症の患者さんには、塩分の摂取量ができるだけ少なくなるように応援しています。まず、麺類とみそ汁のスープを我慢することがスタートです。
 ② お酒の量について
 飲酒量は、適量なら構いませんが飲み過ぎると高血圧を引き起こします。お酒の適量とは、日本酒もしくはワインは180mL/日、焼酎は90mL/日、ビールは350mL/日まで、かつ週1日の休肝日を設けることを指しています。お酒を飲む量が増えると、塩分摂取量も増えることが分かっています。お酒を飲む皆さんは、お酒のお供には、大福よりも焼き鳥が合うことが分かっているはずです。
 ③ 運動の内容と頻度について
 有酸素運動によって血圧が下がることが分かっています。
 理想の有酸素運動の目安は、散歩で言えば、隣の人と息切れせずに話しながら、最も速く歩くことのできる運動です。有酸素運動をすると、運動直後に血圧は大きく下がり、しばらくして上がりますが、わずかに下がったままの状態が2日にわたり続きます。
 ツノクリでは、有酸素運動である散歩(速足)を30分から40分ぐらい、週に3から4日ぐらいすることをお勧めしています。天気の悪い日、調子の悪い日などは無理に歩く必要はありませんが、4日以上さぼると、歩く気分になくなってしまいます。ツノクリでも、散歩を続けられるように応援します。
 ④ 理想的な体重を保つことについて
 食事と運動を上手に調節しながら、適度な(適正)体重を保ちましょう。
 適正体重は、身長(m)×身長(m)×22で計算することができます。身長150cmならおおよそ50kg、160cmならおおよそ56kg、170cmならおおよそ64kgです。ツノクリでも、適正体重を保つことをお勧めしていますが、極端に太ったり痩せたりしていなければ、それで良いと考えています。75歳までは体重が極端に増えないように、そして、75歳からは体重が極端に減らないように、気を付けましょう。
 ⑤ タバコについて
 喫煙すると高血圧症になりやすいことが知られています。
 ツノクリでは、禁煙を強くお勧めしています。ツノクリでは、皆さんにとって大切なことは、できるかぎり長い間、元気で充実した生活を送ることだと思っています。タバコによって、皆さんだけでなく、皆さんの大切な人が元気で充実した生活を送る時間が短くなってしまうことは、とても残念でなりません。タバコを吸う人にとって禁煙はとても難しいですが、失敗しても失敗しても、何度でも挑戦し続けて下さい。ツノクリも、皆さんの禁煙を応援します。さらに、ツノクリでは、禁煙したいけどできないひとに禁煙指導(→禁煙外来について)を行っています。一定の条件を満たせば、保険診療で禁煙指導を受けることもできます。電子タバコは、新しいタバコのため、高血圧症との関連は今のところはっきりとはわかっていません。ただ、タバコに含まれる有害物質に関しては、一般の紙タバコと同様、もしくはそれ以上のため、健康に与える影響はあまり変わらないと考えられています。

Q12.いったんお薬を飲みはじめたらやめられない、本当ですか?

 いいえ、中止することができます。ただし、中止できる人が少ないのも確かです。
 まず、高血圧症では、年齢と生活習慣が大きく関わってきます。特に、高血圧と年齢の関連は最も強く、歳を取ればとるほど、血圧は高くなることが知られています。皆さんも、学生時代の友人に血圧のお薬を飲んでいる人はいなかったと思いますが、久しぶりに同窓会に行くと、多くの友人が血圧のお薬を飲んでいることに驚かされるはずです。年齢を巻き戻すことができないように、血圧を下げることも簡単にできません。つまり、「いったんお薬を飲んだらやめられない」のではなく、「歳と共に血圧が上がるため、お薬はやめることが難しくなる」のです。
 では、お薬がやめられないのが嫌なので、お薬を飲まなければ良いのでしょうか。お薬を飲まずに血圧が高いまま放っておけば、動脈硬化が進んでさらに血圧は高くなります。つまり、高血圧がより進み、治療がより難しくなります。ツノクリでは、高血圧症の患者さんにとって大切なことは、血圧を下げるお薬を飲むか飲まないかではなく、脳卒中や心臓病を防ぎ、元気で充実した生活を送ることだと思っています。

Q13.高血圧に「特定保健用食品(トクホ)」は効果がありますか?

 お勧めはしていませんが、皆様の判断にお任せします。
 「特定保健用食品(トクホ)」とは、食べ物や飲み物が、治療に効果があることを示して、国の審査をもとに消費者庁のお墨付きをもらうものです。
 もともとの、お薬の始まりは、様々な食べ物(植物や動物)などを煎じてエキスにしたものです。トクホにはその一部が入っている、つまり、効果も弱く、副作用も少ない、わずかなお薬が含まれた食べ物や飲み物と考えられます。一方で、トクホは、お薬よりも、普通の食品よりも、かなり高価である場合が多いです。
 ツノクリでは、高いという理由からトクホをお勧めしてはいませんが、皆さんが前向きに治したいと思う気持ちは応援します。ただし、かなり高額な食品などを定期的に(通信販売などで)買うことや、それらの食品を家族や友人などに薦めることは、賛成できません。自分にとって合うトクホが、必ずしも家族や友人の体に合うとは限りません。それぞれの人に、好きな食べ物と嫌いな食べ物があるのと一緒です。

Q14.血圧を下げるお薬にはどのような種類がありますか?

 血圧を下げるお薬には様々な種類があります。
 血圧を下げるお薬には様々あり、一つのお薬の量を増やすよりも、少ない量のお薬を多く組み合わせるほうが血圧が下がることが分かっています。そのため、次にあげるような血圧のお薬を複数組み合わせて飲むのが一般的です。
 ① カルシウム拮抗薬
 動脈を広げることによって血圧を下げるお薬です。最も広く使われ、効果が確実で、重大な副作用が少ないお薬として知られています。特に、高血圧症のみを持つ患者さんに積極的に使われています。副作用として、むくみやほてりなどが起きることがあります。
 ② ACE阻害薬もしくはARB
 血圧を上昇させるホルモンを抑えることにより、血圧を下げ、心臓や腎臓に守ってくれるお薬です。そのため、心臓病や腎臓病(糖尿病を含む)を持つ患者さんに積極的に利用されています。ACE阻害薬の副作用として、空咳が出現することがありますが、困らなければ内服を続けることもあります。ACE阻害薬の副作用である空咳が出ないように工夫したお薬がARBです。ACE阻害薬もしくはARBを飲むと、血液検査上での腎臓の能力の低下がみられることがありますが、お薬を中止すると元に戻ることがほとんどです。
 ③ サイアザイド系利尿薬
 最も安く、効果が確実で、塩分を排泄することによって血圧を下げるお薬です。特に、毎日の塩分摂取量が多い、拡張期血圧(下の血圧)が高い患者さんに積極的に使われます。副作用として、トイレに行く回数が増えることがあります。サイアザイド系利尿薬を飲むと、血液検査上での腎臓の能力の低下がみられることがありますが、お薬を中止すると元に戻ることがほとんどです。
 ④ β遮断薬/ベータ遮断薬
 自律神経の興奮を抑えることによって、動脈の緊張をほぐし、かつ心拍数(脈拍数)を抑え、心臓を守ってくれる作用のあるお薬です。そのため、心臓病を持つ患者さんに積極的に使われています。副作用として、気管支喘息の患者さんでは気管支喘息の発作が出現したり、高齢の患者さんでは、心拍数(脈拍数)が極端に遅くなったりすることがあります。そのため、少量から慎重に使う必要があります。

Q15. 血圧を下げるお薬にはどのような副作用がありますか?

 血圧を下げる全てお薬に、ふらつきや立ちくらみなどを起こす可能性があります。
 ふらつきや立ちくらみは、血圧を下げることによって、頭に流れる血液が一時的に減ってしまうことによって生じます。脳を栄養する血管がつまってしまう(脳梗塞)わけではありませんから、続けて飲んでもらうこともあります。しかし、高齢の患者さんでは、転倒の原因などになるため、中止することもあります。血圧を下げるお薬の種類によっても、そのお薬に特徴的な副作用が出ることがあります。また、添付文書に記載されていないような副作用も出ることがあります。お薬を飲んで副作用を疑った場合には、いつでも相談してください。

Q16. 血圧の治療目標値はありますか?

 はい、あります。
 しっかりと血圧を管理することにより、脳卒中と心臓病が減ることから、ツノクリでは、患者さんと相談しながら血圧値の目標を決めます。ただし、高齢の患者さんは、十分に血圧を下げることが難しかったり、お薬によって血圧が下がりすぎたりすることがあるので、厳しい血圧管理を無理にお勧めすることはありません。

Q17.高齢者の高血圧症にも治療は必要ですか?

 必要な場合とそうでない場合があります。
 一般的な患者さんでは、より厳しい降圧療法により、脳卒中や心臓病が減ることが知られています。具体的には、自宅の収縮期血圧において、120mmHg未満が理想的で、薬による治療目標は135mmHg未満です。一方、欧米の報告では、75歳以上の患者さんでは、収縮期血圧 140~160 mmHg、拡張期血圧80~90mmHgでの死亡率が低かったとされています。さらに、元気に活動することのできない高齢者では、血圧が低いと、むしろ早く亡くなる人が増える可能性があると考えられています。
 ツノクリでは、年齢に関わらず、元気な人であれば、自宅血圧の治療目標は135/85mmHg程度、75歳以上で元気に活動できない人や、85歳以上であれば、自宅血圧の治療目標は180/110mmHg程度と考えています。ただし、高齢者の中にも、血圧が高いために入浴やリハビリテーションのサービスが受けられないなどの不都合があれば、サービスが受けられる程度の血圧に下げる努力をする場合もあります。

Q18.血圧が下がりすぎても大丈夫でしょうか?

 拡張期血圧(下の血圧)が下がりすぎると、脳卒中や心臓病が増える可能性があります。
 比較的健康な人であれば、拡張期血圧が低下しすぎると脳卒中や心臓病の危険性が増える可能性があります。比較的健康で血圧を下げるお薬を飲んでいる患者さんを対象に、血圧の値が脳卒中と心臓病の発症に与える影響を調べた研究が、2024年2月に報告されました。その研究によれば、収縮期血圧(上の血圧)は低く(110mmHg未満)ても脳卒中と心臓病は増えませんでしたが、拡張期血圧(下の血圧)が低く(60mmHg未満)なると、脳卒中や心臓病の危険性が約25%増えることがわかりました。一方で、収縮期血圧130mmHg以上、もしくは拡張期血圧90mmHg以上で、脳卒中や心臓病の危険性が明らかに増加することもわかりました。
 また、欧州の報告によれば、狭心症を持つ患者さんでは、130/80mmHg前後の血圧が望ましく、それ以上でもそれ以下でも脳卒中や心臓病の危険性は増加していました。
 ツノクリでは、収縮期血圧110mmHg、拡張期血圧60mmHg未満になった際には、降圧薬を減量する提案をすることがあります。ツノクリでは、お薬は少なければ少ないほど良いと考えています。しかし、過去に心筋梗塞を起こした患者さんには、血圧が低くても心臓を守るための降圧薬を続けることをお勧めすることがあります。

第3版 2024年3月14日

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