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気管支喘息

はじめに

 わが国には、昔と変わらず多くの気管支喘息の患者さん(有病率6~10%)がいますが、気管支喘息発作を起こした患者さんを診療することは少なくなりました。1990年頃までの気管支喘息治療は、主にテオフィリン製剤や吸入短時間作動型β2刺激薬であり、治療の難しい患者さんには経口ステロイド薬が使われることもしばしばでした。しかし、2000年頃から吸入ステロイド薬(→Q13)が広く普及したことにより、気管支喘息発作で受診する患者さんは徐々に少なくなってきました。これは、裏を返せば、吸入ステロイド薬が、気管支喘息治療においてとても重要であることを意味しています。そのため、気管支喘息患者さんは、たとえ気管支喘息の発作がなくても、吸入ステロイド薬の吸入を毎日しっかりと行う必要があります。気管支喘息の発作を繰り返すと、気管支喘息発作が慢性化して気道のリモデリング(→Q7)をきたし、年齢を重ねるごとに息苦しさは増してきます。今でも、わが国で、年間1,500人前後の患者さんが気管支喘息により命を落としており、そのほとんどが65歳以上の高齢者です。若いうちから気管支喘息治療をしっかりと行うことは、歳を取って息苦しくない生活を送るための大切なステップなのです。
 ツノクリでは、クリニックの方針としてできるだけお薬に頼らずに済む方法を考えています。しかし、ツノクリは、気管支喘息治療においては、お薬に頼らずに治療することはとても難しい(危険)ことが分かっていることから、お薬(吸入ステロイド薬)を使い続けることをお勧めしています。特に、若い気管支喘息患者さんから、しばらく気管支喘息の発作が無いことを理由に、治療の中断を提案されることがありますが、できるだけ治療を続けてもらうようにお話しています。ツノクリは、皆さんにとって大切なことは、お薬を使うかどうかではなく、できるかぎり長い間、元気で充実した生活を送ることだと思っています。


Q1.気管支喘息とはどんな病気ですか?

 さまざまな要因によって、一時的に空気の通り道(気道)が狭くなり、咳嗽、呼吸困難、喘鳴などが出現する病気です。
気管支喘息では、治療などにより一時的な気道の狭窄が改善する、気道可逆性という現象があります。これが、慢性閉塞性肺疾患(→Q8)との違いになります。

Q2. 気管支喘息になりやすい要因はありますか?

 はい、あります。
 気管支喘息を発症する主な要因として、アレルギー(ハウスダスト、ペット、花粉など)、アトピー素因、遺伝素因(家族歴)、喫煙(受動喫煙を含む)などが知られています。遺伝素因を変えることはできませんが、気管支喘息を予防するためには、アレルギー物質は可能な限り避けること、(周りの人を含めて)禁煙することが大切です。

Q3. 気管支喘息は肥満(や妊娠)と関係がありますか?

 はい、関係しています。
肥満は、気管支喘息を発症する要因であることが分かっています。特に、肥満女性での気管支喘息の頻度は、適正体重の女性の約2倍であることが分かっています。体重を減らすことにより、気管支喘息が改善することも分かっていることから、気管支喘息をもつ肥満女性にとって、減量は有効な治療手段となります。
肥満と同様に、妊娠も気管支喘息を悪化させるため、妊娠した際には、気管支喘息治療をしっかり継続して行うことが大切です。妊婦さんの中には、吸入ステロイド薬(→Q14)を使うことに抵抗を示す人もいますが、吸入ステロイド薬(なかでもパルミコート)は妊婦さんにも安全に使用できるとされています。一方、妊婦さんでの治療中断による気管支喘息発作は、胎児に低酸素血症をもたらし、胎児の発育を妨げる可能性があるだけでなく、生命を脅かすことも分かっています。もちろん、妊娠中は、可能な限りお薬を使わないことが望ましいですが、治療を中断する不利益がとても大きいことから、妊娠中も吸入ステロイド薬による治療を続けることを強くお勧めします。

Q4. 気管支喘息によって亡くなってしまうことはありますか?

 はい、まれですが、亡くなることがあります。
わが国では、20年前までは気管支喘息のために年間5,000人以上の患者さんが命を落としていました。しかし、2000年頃から吸入ステロイド薬が広く普及し、気管支喘息による死亡者数は減少し、今では年間死亡者数は1,500人ほどになりました。気管支喘息で命を落とす患者さんは、ここ20年で大きく減少しましたが、気管支喘息は亡くなってしまう病気であることには変わりがありません。

Q5. 気管支喘息はどのように診断しますか?

 確実に診断することは難しいですが、問診と聴診は大きなヒントになります。
 気管支喘息では、発作時に咳嗽、呼吸困難、喘鳴が出現して、改善と悪化を繰り返します。そのため、患者さんには、いつ、どこで、どんな時に、どの程度の発作が出現するのかを確認します。なかでも、夜間から明け方(生理的に気道が狭くなる時間帯)の発作は、気管支喘息でよくみられることから、診断の参考になります。診察時の聴診は、小さな喘鳴(「ヒューヒュー」「ゼイゼイ」)を聴き取る大切な診察で、気道が狭くなっていること示す重要な所見になります。
 医学的には、呼吸機能検査で気道可逆性を確認することが重要です。確かな診断基準は示されていませんが、治療をしていない気管支喘息が疑われる患者さんにおいて、1秒率(できるだけ息を吸い込んだ後に、1秒間に頑張って吐き出す呼気量(1秒量)の、最後まで吐き出す呼気量(努力肺活量)に対する割合)が70%以下であれば、気管支喘息を強く疑います。さらに、気管支拡張薬を吸入して、1秒量が12%以上かつ200mL以上改善すれば気道可逆性があると証明されます。その場合には、気管支喘息と診断してほぼ間違いありませんが、慢性閉塞性肺疾患(→Q8)を合併している可能性もあるため注意が必要です。尚、最近、気管支喘息診断の一助として、簡便な呼気一酸化窒素濃度(FeNO→Q6)が利用されるようになってきました。
 ツノクリでは、呼吸機能検査は実施できないため、受診日にピークフローメーターを利用して最高呼気速度(ピークフロー値)を測定しています。ピークフローは呼吸機能検査に正確性で劣りますが、気管支喘息患者さんの発作の状態を客観的に把握するための参考になります。ツノクリに受診している気管支喘息の患者さんは、是非、受診時にピークフロー値を測定してください。

Q6. 呼気一酸化窒素濃度(FeNO)とは何ですか?

 気道の好酸球性炎症を推定するための指標です。
呼気中の一酸化窒素(NO)は、気道に好酸球性炎症が生じた際に増加します。気管支喘息患者さんでは、健常人と比べて気道の好酸球性炎症が強いため、呼気中の一酸化窒素濃度が高くなります。2021年10月現在、わが国では、2種類の一酸化窒素濃度測定機器が販売され、簡便な気管支喘息の診断方法として利用されています。呼気一酸化窒素濃度が、20ppb未満では気道の好酸球性炎症(気管支喘息の可能性)はほとんどないと考えられ、40ppb以上であれば気道の好酸球性炎症(気管支喘息の可能性)が強いと考えられます。
 ツノクリでは、呼気一酸化窒素濃度測定機器はありませんが、呼吸器内科を専門とするクリニックの中には気管支喘息の診断に活用しているクリニックもあります。自分が気管支喘息かどうかを数値で確かめてみたいという方は、呼吸器内科を専門としているクリニックのホームページなどで呼気一酸化窒素濃度測定機器の有無を確認してみると良いかもしれません。

Q7. 気道のリモデリングとは何ですか?

 気道周囲の構造物が壊れて、元に戻らなくなってしまった状態です。
気管支喘息の発作が起きると、一時的に気道の表面の粘膜と周囲の構造物が壊れてしまいます。壊れた粘膜と構造物は時間と共に修復されますが、一部の粘膜と構造物は完全には修復されず、壊れた構造物は弾力を失い変形します。この状態が気道のリモデリング(再構築)です。そして、弾力を失い変形した構造物は、発作を繰り返すことにより増大して厚みを増し、気道内部にせり出して気道は狭くなります(リモデリングの進行)。このように気道が慢性的に狭くなると、喘息発作をきたしやすくなり、お薬が効きにくくなります。そのため、気管支喘息の治療では、気管支喘息発作を起こさないようにすることが大切です。

Q8. 呼吸困難と喘鳴(「ヒューヒュー」「ゼイゼイ」)があるのですが気管支喘息ですか?

 いいえ、必ずしも気管支喘息とは限りません。
気管支喘息だけでなく急性気管支炎、慢性閉塞性肺疾患や心不全(→「心不全」参照)でも、咳嗽、呼吸困難、喘鳴が出現します。そのため、気管支喘息が疑われた際には、これらの疾患を鑑別することが必要です。特に、慢性閉塞性肺疾患との鑑別は難しく、その理由に、慢性閉塞性疾患を持つ患者さんの4人に1人が気管支喘息を合併していることが挙げられます。気管支喘息に特徴的な気道過敏性の亢進は、慢性閉塞性肺疾患の発症にも関係しており、一方で慢性閉塞性肺疾患に特徴的な慢性的な気道の狭窄は、喘息発作をきたしやすくします。慢性閉塞性肺疾患を合併しているかを確かめるためには、高分解能CT(HRCT)検査が有用です。
 ツノクリでは、高分解能CT検査を行うことはできませんが、患者さんの予定を伺ったうえで地域中核病院へ直接、高分解能CT(HRCT)検査の予約を取ることができます。慢性閉塞性肺疾患が疑われる患者さんで、高分解能CT検査をご希望される方は当クリニックの医師にご相談ください。

Q9. 咳喘息と診断されたのですが、気管支喘息とは違いますか?

 はい、咳喘息(→「咳喘息」参照)は、気管支喘息とは違います。
咳喘息は、喘鳴(「ヒューヒュー」「ゼイゼイ」)や呼吸困難を伴わない長引く咳が唯一の症状で、アレルギーを持つ患者さんに多くみられ、慢性的な咳嗽の原因として最も頻度の高い疾患です。
咳喘息は、喘鳴や呼吸困難を伴わない長引く咳で、気管支喘息の治療薬が有効なことから咳喘息と呼ばれています。咳喘息は、気管支喘息とは異なりますが、成人の咳喘息患者さんの3割前後が気管支喘息に移行するという報告があります。そのため、咳喘息の症状を繰り返す場合には、気管支喘息への移行を防ぐために、吸入ステロイド薬を数年にわたって使用する場合もあります。

Q10. アスピリン(NSAIDs過敏)喘息とはとのような喘息ですか?

 アスピリン(NSAIDs:非ステロイド性抗炎症薬)の使用により、炎症を抑える特定の物質が減ることにより、気管支喘息発作に似た症状が起きる病気です。
 アスピリン喘息患者さんでは、アスピリン(NSAIDs)を使うことにより、炎症を抑える特定の物質が減る一方で、炎症を誘発する物質が増えることによって、気管支喘息に似た症状を起こします。アスピリン喘息は、長年にわたって鼻茸(はなたけ)による慢性副鼻腔炎(嗅覚障害や鼻閉など)症状に悩まされている20~40歳の女性に多いことが分かっています。アスピリン喘息患者さんでは、可能な限りアスピリン(NSIDAs)を避けることが望ましいことが分かっています。そのため、アスピリン喘息と診断されている患者さんがクリニックを受診する際には、必ずアスピリン喘息であることを伝えましょう。

Q11. 気管支喘息の重症度はどのように分類するのですか?

 気管支喘息の発作頻度などで4段階に分類されます。
治療をする以前の気管支喘息患者さんは、喘息発作頻度などで、下の表のように4段階に分類されます。この分類は、気管支喘息の治療方法(→Q12)を決めるための大切な分類です。

○ 未治療の臨床所見による気管支喘息重症度の分類

重症度 軽症間欠型 軽症持続型 中等症持続型 重症持続型
喘息発作 頻度 週1回未満 週1回以上 毎日 毎日
強さ 軽 度 月1回以上日常生活に支障をきたす 週1回以上日常生活に支障をきたす 日常生活に支障をきたす
夜間 月2回未満 月2回以上 週1回以上 しばしば
1秒率 80%以上 60~80% 60%未満

 

 

Q12. 気管支喘息の治療法ははどのように決めるのですか?

 一般的に、気管支喘息の重症度(→Q11)によって決定します。
気管支喘息治療は、その重症度に関わらず吸入ステロイド薬(→Q14)を使うことが基本です。吸入ステロイド薬は、気管支喘息発作を抑える効果が強いだけでなく、副作用も少ないことが分かっています。

○ 気管支喘息重症度による慢性期の治療方法

軽症間欠型 軽症持続型 中等症持続型 重症持続型
吸入ステロイド薬(低用量から高用量)
上記が使用できない場合に下記から1剤 場合によっては下記から1剤 下記から 1剤あるいは複数 下記から複数
- 吸入長時間作動型β2刺激薬
- 吸入長時間作動型ムスカリン受容体拮抗薬
ロイコトリエン受容体拮抗薬
テオフィリン徐放製剤
発作時に吸入短時間作動型β刺激薬

 

Q13. 気管支喘息の治療薬にはどのようなお薬がありますか。

 治療の基本は吸入ステロイド薬ですが、他にも数種類あります。
 <吸入薬>

  1.  吸入ステロイド薬:吸入ステロイド薬は、好酸球性炎症、気道分泌物ならびに気道過敏性を抑えることにより、多面的に気管支喘息発作を防ぎます。長期的には、気道のリモデリング(→Q7)を防ぎ、生活の満足度を向上させ、亡くなってしまう患者さんを減らすことも分かっています。ただ、喫煙者や高齢者では効果が弱いことも知られているため、そのような患者さんには他のお薬を追加する必要があります。主な副作用として、咳、声枯れ(嗄声)、口腔内の乾燥やカビ(カンジダ症)などの局所症状がみられ、多くの場合は吸入前後のうがいで改善します。吸入ステロイド薬(→Q14)、吸入ステロイド薬と吸入長時間作動型β2刺激薬の配合剤(→Q15)の種類については、別に記載しています。
  2.  吸入長時間作動型β2刺激薬:吸入長時間作動型β2刺激薬は、吸入ステロイド薬と併せて使用され、半日から一日にわたって気道を拡張させる効果を持つ吸入薬です。気管支喘息治療では単独では使用しませんが、吸入ステロイド薬と相性が良いことから、吸入ステロイドとの配合剤になっています。主な副作用として、動悸やふるえ(振戦)がありますが、生活の満足度を低下させるほどには至らない場合が多いです。吸入ステロイド薬と吸入長時間作動型β2刺激薬の配合剤(→Q15)の種類については、別に記載しています。
  3.  吸入短時間作動型β2刺激薬:吸入短時間作動型β2刺激薬は、気管支喘息発作時に使用され、吸入によって速やかに気道を拡張して、発作を軽減する作用を持つ吸入薬です。気管支喘息発作の際には、積極的に使って発作を速やかに抑えることが重要ですが、たびたび(週に2回以上)使用するようであれば治療の強化が必要(→Q17)です。特に、数年にわたり、たびたび吸入短時間作動型β2刺激薬を使用した場合、使用した量に応じて死亡率が高くなることが分かっています。
     ツノクリでも、気管支喘息発作を改善するために、吸入短時間作動型β2刺激薬(メプチンエアー)を処方しますが、吸入短時間作動型β2刺激薬を週に1-2回以上使用することがあれば、相談したうえで慢性期の治療を強化(→Q17)することをお勧めしています。
  4.  吸入長時間作動型抗コリン薬:吸入長時間作動型抗コリン薬は、吸入ステロイド薬と吸入長時間作動型β2刺激薬と併せて使用され、半日から一日にわたって気道を拡張させる効果を持つ吸入薬です。特に、気管支喘息患者さんが、慢性閉塞性肺疾患(→Q8)を合併している際に効果を発揮します。ただし、排尿障害のある前立腺肥大症の患者さんと閉塞隅角緑内障のある患者さんは、この吸入薬で症状が悪化する可能性があるため、使うことができません。吸入ステロイド薬と吸入長時間作動型β2刺激薬と吸入長時間作動型抗コリン薬の3剤配合剤(→Q16)の種類については、別に記載しています。


 <飲み薬>

  1.  ロイコトリエン受容体拮抗薬:ロイコトリエン受容体拮抗薬は、気道の炎症やむくみを抑えることにより、空気を通りやすくするお薬です。特に、吸入ステロイド薬との相性が良いことが知られています。軽症の気管支喘息患者さんで、吸入薬が苦手な場合や吸入ステロイド薬で副作用が出てしまう場合には、単独で使うこともあります。ほとんど副作用のないお薬のため、使いやすいお薬です。
    ツノクリでも、ロイコトリエン受容体拮抗薬(モンテルカスト)を使用しますが、気管支喘息治療では、吸入ステロイド薬には敵わないため、まずは吸入ステロイド薬の使用をお勧めしています。
  2.  テオフィリン製剤:テオフィリン製剤は、気道を拡張させる効果を持つお薬です。吸入ステロイド薬やロイコトリエン受容体拮抗薬が登場するまでは、気管支喘息治療によく使われていましたが、他の治療薬と比べて効果が弱いことや動悸などの副作用が多いことなどから、現在ではあまり使用されていません。ただ、気管支喘息患者さんが、慢性閉塞性肺疾患(→Q8)を合併している際には効果を発揮します。
  3.  経口ステロイド製剤:重症持続型の気管支喘息患者さんで、吸入ステロイド薬をはじめとして複数のお薬を組み合わせて治療しているにもかかわらず、気管支喘息によって日常生活の満足度が低下してしまっている患者さんに使います。経口ステロイド製剤は、気道だけでなく全身に作用するため、長期間の使用により様々な副作用(特に、日和見感染:免疫機能の低下により、健康な人では症状が出ないような菌に感染して症状が出てしまうこと)がみられることがあり、注意しながら使う必要があります。
     ツノクリでは、十分な治療をしているにもかかわらず、強い気管支喘息発作が出現してしまった患者さんに、経口ステロイド製剤を使用することがあります。その際には、経口ステロイド製剤として、プレドニゾロン(一般名:プレドニン)を30mg/日前後使います。気管支喘息発作治療に対するプレドニゾロンの短期間(1週間程度)使用であれば、大きな副作用も見られず、徐々に減量する必要もない場合がほとんどです。


Q14. 吸入ステロイド薬には、どのようなものがありますか?

吸入ステロイド薬は複数あり、それぞれの特徴があります。
2021年10月現在、本邦での吸入ステロイド薬は、6種類あります。全てを説明するのは難しいため、ツノクリで主に使用している、ブデソニド(製品名:パルミコート)とフルチカゾン(製品名:アニュイティ)について説明します。
 ブデソニドは、最も使用されている吸入ステロイド薬で、安全性が高く、妊婦さんにも使うことができます。一方で、ロケット型のタービュヘイラ―と呼ばれる装置を使うため、操作が比較的難しいことや、1日2回吸入しなければならない点に注意が必要です。尚、2021年10月現在、吸入ステロイド薬の中で、唯一、ジェネリック製剤があるため、金銭的な負担を軽減することができます。
 アニュイティは、多くの吸入薬を販売しているグラクソスミスクライン社の吸入ステロイド薬で、貝殻型のエリプタ(オレンジ色)と呼ばれる装置を使うことにより、簡便かつ確実に吸入することができます。さらに、1日1回の吸入で24時間にわたり効果が得られるため、吸入を忘れてしまう可能性の少ないお薬です。

Q15. 吸入ステロイド薬と吸入長時間作動型β2刺激薬の配合剤には、どのようなものがありますか?

 吸入ステロイド薬と吸入長時間作動型β2刺激薬の配合剤は複数あります。
 2021年10月現在、わが国での吸入ステロイド薬と吸入長時間作動型β2刺激薬の配合剤は、4種類あります。吸入ステロイド薬と吸入長時間作動型β2刺激薬の配合剤は、現在の気管支喘息治療薬の中心的な役割を担っています。なかでも、ツノクリで主に使用している、ブデソニド/ホルモステロール(製品名:シムビコート)とフルチカゾン/ホルモステロール(製品名:レルベア)について説明します。
 ブデソニド/ホルモステロールは、単剤で気管支喘息の慢性期治療と発作時治療を同時に行える特徴(SMART療法)を持っています。SMART療法とは、気管支喘息の慢性期治療においてブデソニド/ホルモステロールを1日2回2~4吸入/日している気管支喘息患者さんが、気管支喘息発作を生じた際に、ブデソニド/ホルモステロールを最大12吸入/日(8~10追加吸入/日)まで追加使用することができる治療法です。SMART療法は、気管支喘息患者さんの生活の満足度を向上させるだけでなく、お薬をしっかりと使うためにも役立ちます。さらに、吸入ステロイド薬と吸入長時間作動型β2刺激薬の配合剤の中で、唯一、ジェネリック製剤があるため、金銭的な負担を軽減することができます。
 フルチカゾン/ホルモステロールは、アニュイティと色違いの貝殻型のエリプタ(水色)と呼ばれる装置を使うことにより、簡便かつ確実に吸入することができます。さらに、1日1回の吸入で24時間にわたり効果が得られるため、吸入を忘れてしまう可能性の少ないお薬です。現在、ツノクリの気管支喘息患者さんに最も使用されいてる吸入薬です。

Q16. 吸入ステロイド薬と吸入長時間作動型β2刺激薬と吸入長時間作動型抗コリン薬の3剤配合剤には、どのようなものがありますか?

 吸入ステロイド薬と吸入長時間作動型β2刺激薬と吸入長時間作動型抗コリン薬の3剤配合剤には複数あります。
 2021年10月現在、本邦での吸入長時間作動型β2刺激薬と吸入長時間作動型抗コリン薬の3剤配合剤には3種類あり、気管支喘息治療に使用できるのは2種類です。
 ツノクリでは、特に、気管支喘息に慢性閉塞性肺疾患を合併している患者さんに、フルチカゾン/ホルモステロール/ウメクリジニウム(テリルジー)やブデソニド/ホルモテロール/グリコピロニウム(ビレーズトリ)を使うことがあります。テリルジーは、アニュイティとレルベアと色違いの貝殻型のエリプタ(乳白色)と呼ばれる装置を使うことにより、簡便かつ確実に吸入することができます。こちらも、1日1回の吸入で24時間にわたり効果が得られるため、吸入を忘れてしまう可能性の少ないお薬です。一方で、ビレーズトリは、細かい薬剤の粒子を勢い良く放出する装置(加圧噴霧式定量吸入器)により、吸気力が弱くなってしまった患者さんの肺内に効率良くお薬を送り届けることができます。ただ、このお薬は、1日2回2吸入ずつ(1日4吸入)行う必要があります。

Q17. 吸入短時間作動型β2刺激薬は使わないほうが良いですか?

 気管支喘息発作の際には、迷わず使って下さい。
 吸入短時間作動型β2刺激薬は、気管支喘息発作時に使用し、気管支喘息発作を速やかに抑えることができる吸入薬です。吸入短時間作動型β2刺激薬を吸入すると、気管支喘息発作が速やかに改善するため、以前は多用する患者さんが多く見られました。しかし、吸入ステロイド薬が気管支喘息発作の予防にとても効果があることや、数年にわたり、たびたび吸入短時間作動型β2刺激薬を使用した場合、使用した量に応じて死亡率が高くなることから、最近ではほとんど使われていません。
 ツノクリでも、吸入短時間作動型β2刺激薬を使う頻度が増えた際には、相談の上で、慢性期治療を強化することをお勧めしています。

Q18. 気管支喘息治療にクロモグリク酸(インタール)を使うことはありますか?

 クロモグリク酸(インタール)は小児喘息や運動誘発性喘息に使われます。
 クロモグリク酸(インタール)は、成人の気管支喘息治療に使われることはほとんどありません。クロモグリク酸は、運動誘発性喘息に効果があり、吸入短時間作動型β2刺激薬(→Q13)と同じように使われることがあります。運動誘発性喘息は、運動により気管支が一時的に収縮することによって起こるため、一般的な気管支喘息と異なる機序により発作が生じます。運動誘発性喘息を予防する方法として、冷たく乾燥した場所での運動を避けること、事前に十分な準備運動をすること、そして、運動する10分ほど前に吸入短時間作動型β2刺激薬もしくはクロモグリク酸を使うことがあります。

Q19. 気管支喘息に対する生物学的製剤治療とは何ですか?

 重症持続型の気管支喘息患者さんに適応のある、過剰な免疫機能を抑える新たな治療法です。
近年の医学の進歩により、生物学的製剤(モノクローナル抗体)と呼ばれる、特定の免疫機能を抑えることができる治療法が開発されています。この生物学的製剤を利用して、特定の免疫機能を抑えることにより、過剰な免疫活動である気管支喘息を治療できるようになりました。治療費はとても高額(保険診療でも1か月で数万円から数十万円)になりますが、さまざまな臨床試験で良好な結果が出ています。
 ツノクリでは生物学的製剤による治療は行っていませんが、しっかりと気管支喘息治療を行っていながら、気管支喘息発作を繰り返す患者さんには、是非、お勧めしたい治療です。

第一版 2021年11月1日

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