睡眠時無呼吸症候群(SAS/サス)について
はじめに
睡眠時無呼吸症候群(SAS)は、就寝中1時間当たり5回以上、呼吸をしない、もしくは呼吸ができない状態(無呼吸)や、それらに近い状態(低呼吸)を繰り返す病気です。患者さんの多くは、自覚症状がないため、睡眠時無呼吸症候群に気づかないまま、血圧がとても高くなったり、心臓病になったりすることがあります。そのため、まずは、皆さんに睡眠時無呼吸症候群を知ってもらい、疑わしければ検査してみることをお勧めします。一方で、睡眠時無呼吸症候群には根本的な治療法がありません。そのため、睡眠時無呼吸症候群の治療には、就寝中に呼吸を補助する持続陽圧呼吸療法(CPAP)(→Q10)と呼ばれる機器を使う必要があります。また、CPAPでの治療を開始しても、CPAPの不快感や経済的負担から、CPAPを続けることが難しい患者さんもいます。
ツノクリでは、特に、血圧が高い若い患者さんや日中に眠気の強い人、そして、パートナーにいびきがひどいと言われる人に、まずは、自宅でできる簡便モニター(アプノモニター)検査(→Q8)を受けることをお勧めしています。過去に勤務していた大学病院では、睡眠時無呼吸症候群が疑われる循環器内科の患者さんにアプノモニター検査を実施したところ、約半数の患者さんに、睡眠時無呼吸症候群(疑いを含む)を認めました。CPAPによる治療を続けることは難しいですが、ツノクリでは、できるだけ皆さんが治療を長く続けられるように応援します。特に、お客さんを乗せて運転する職業(バスやタクシー運転手など)に従事している患者さんは、治療の中断により交通事故を引き起こす可能性もあります。そのため、治療を続けることが難しければ、業務内容を変更してもらう場合もあります。
目 次
睡眠時無呼吸症候群について知っておきたいこと
Q1. 睡眠時無呼吸症候群とはどのような病気ですか?
Q2. 無呼吸、低呼吸とはどのような状態ですか?
Q3. 睡眠時無呼吸症候群にはどのような種類がありますか?
Q4. 閉塞性睡眠時無呼吸症候群(O-SAS/オーサス)とは何ですか?
Q5. 中枢性睡眠時無呼吸症候群(C-SAS/シーサス)とは何ですか?
Q6. 睡眠時無呼吸症候群の重症度や治療効果はどのように判断しますか?
Q7. 日中の眠気の原因が、睡眠時無呼吸症候群の可能性がありますか?
Q8. 睡眠時無呼吸症候群の簡易モニター検査とはどんな検査ですか?
Q9. 睡眠時無呼吸症候群診断に最も有用な検査は何ですか?
睡眠時無呼吸症候群の治療
Q10. 睡眠時無呼吸症候群の一般的な治療法は何ですか?
Q11. CPAPは簡単にできますか?
Q12. CPAPを使うことは大切ですか?
Q13. CPAPは途中でやめても大丈夫ですか?
Q14. 閉塞性睡眠時無呼吸症候群にはどのような症状がありますか?
Q15. (お酒を飲んだ日の)夜のいびきは、閉塞性睡眠時無呼吸症候群でしょうか?
閉塞性睡眠時無呼吸症候群に関係する病気
Q16. 閉塞性睡眠時無呼吸症候群は高血圧と関係がありますか?
Q17. 閉塞性睡眠時無呼吸症候群は糖尿病と関係しますか?
Q18. CPAPに副作用はありますか?
Q19. CPAPは簡単にできますか?
Q20. 閉塞性睡眠時無呼吸症候群の口腔内装置(マウスピース)とは何ですか?
Q21. 閉塞性睡眠時無呼吸症候群で口腔内装置(マウスピース)を使う際の注意点はありますか?
Q22. 閉塞性睡眠時無呼吸症候群を良くする方法はありますか?
Q23. (お酒を飲んだ日の)夜のいびきは、閉塞性睡眠時無呼吸症候群でしょうか?
Q24. 閉塞性睡眠時無呼吸症候群で睡眠薬を飲むことができますか?
Q25. 閉塞性睡眠時無呼吸症候群で自動車の運転は大丈夫ですか?
睡眠時無呼吸症候群と関連する睡眠について
Q26. 一晩で眠る時間はどのくらいですか?
Q27. REM(レム)睡眠とは何ですか?
睡眠時無呼吸症候群について知っておきたいこと
Q1.睡眠時無呼吸症候群とはどのような病気ですか?
睡眠時無呼吸症候群は、就寝1時間あたり5回以上、繰り返し、無呼吸もしくは低呼吸(→Q2)になる病気です。この無呼吸もしくは低呼吸の1時間当たりの回数は、無呼吸低呼吸指数(AHI/エーエイチアイ)(→Q6)と呼ばれ、睡眠時無呼吸症候群の重症度を決めたり、治療効果を判定したりする上で、とても重要な指標です。
Q2.無呼吸、低呼吸とはどのような状態ですか?
-
- 無呼吸:睡眠中に呼吸していない状態が10秒以上続いたとき
- 低呼吸:睡眠中に呼吸が弱くなる状態が10秒以上続き、酸素飽和度が3%以上低下したとき、もしくは呼吸が苦しくて目が覚めたとき、とされています。
Q3.睡眠時無呼吸症候群にはどのような種類がありますか?
睡眠時無呼吸症候群には、閉塞性睡眠時無呼吸症候群(O-SAS)(→Q4)と中枢性睡眠時無呼吸症候群(C-SAS)(→Q5)があります。
Q4.閉塞性睡眠時無呼吸症候群(O-SAS/オーサス)とは何ですか?
就寝中に、空気の通り道(気道)が閉塞、もしくは狭窄することにより、一時的に無呼吸もしくは低呼吸になる病気です
睡眠時無呼吸症候群と診断された方で、無呼吸と低呼吸の半分以上が、気道の閉塞や狭窄が原因の場合に、O-SASと診断されます。O-SASは、太っている人や歳をとった男性に多く、苦しくなって目が覚めたり、パートナーがいびきや呼吸が止まることによって気づかれることがあります。いびきは、呼吸をする際に気道が狭くなることによって生じるため、O-SASと関連している可能性があります。また、O-SASは、生活習慣病や心臓病、また認知症の発症と進展に関連することが知られています。そのため、O-SAS治療により、高血圧症や糖尿病、また心臓病の病状が改善することがあります。
Q5.中枢性睡眠時無呼吸症候群(C-SAS/シーサス)とは何ですか?
就寝中に、脳からの「呼吸」の命令が途絶し、一時的に無呼吸もしくは低呼吸になる病気です
睡眠時無呼吸症候群と診断された方で、無呼吸と低呼吸の半分以上が、脳からの「呼吸」の命令が途絶することが原因の場合に、C-SASと診断されます。C-SASは、心臓病(特に心房細動)や脳卒中の患者さんなどに多くみられます。また、チェーンストークス呼吸と呼ばれる周期的な呼吸は、C-SASでみられる特徴的な呼吸状態の一つです。
Q6.睡眠時無呼吸症候群の重症度や治療効果はどのように判断しますか?
無呼吸低呼吸指数(AHI/エーエイチアイ)によって決まります。
就寝中の無呼吸と低呼吸の頻度が高ければ高いほど重症になります。もちろん、重症であればあるほどCPAPによる治療をお勧めします。治療によって、無呼吸低呼吸指数が減少すれば、治療効果があると判断できます。
閉塞性睡眠時無呼吸症候群の検査
〇 睡眠時無呼吸症候群の重症度 |
|
重症度 |
無呼吸低呼吸指数(AHI) |
軽症 |
5 ≦ AHI < 15 |
中等症 |
15 ≦ AHI < 30 |
重症 |
30 ≦ AHI |
Q7.日中の眠気の原因が、睡眠時無呼吸症候群の可能性がありますか?
はい、あります。
眠気の評価として、エプワース睡眠尺度(ESS)があります。エプワース睡眠尺度は、皆さんの生活に影響を与える日中の集中力の低下や眠気を評価する調査票です。Web上で「SAS net」https://www.kaimin-life.jp/ess.html と検索すると、簡単に調査票によって判定できます。気になる人は、是非、確認してみて下さい。
Q8.睡眠時無呼吸症候群の簡易モニター検査とはどんな検査ですか?
自宅で簡単に行える睡眠時無呼吸症候群の簡易検査です。
簡易検査には主に2種類あります。ひとつは、指先にセンサーを装着して、就寝中の動脈血液中の酸素飽和度(血液と酸素が結合している割合)と脈拍を測定する方法と、もうひとつは、上記に加えて、鼻の下にセンサーを固定して、就寝中の呼吸状態を測定する方法です。
ツノクリでは、皆さんに、電話で検査ができる日にちを確認した上で、検査会社から簡易モニターキットを自宅にお送りします。一晩もしくは二晩、自宅で簡易モニターを装着して寝てもらい、検査会社に送り返してもらいます。検査会社が、結果をツノクリに届けてくれますので、皆さんの受診時に検査結果(AHIならびにC-SASもしくはO-SASなど)をお伝えすることができます。その際、重症であればCPAPによる治療を、また中等症であれば診断のための精密検査(睡眠ポリグラフ検査)(→Q9)をお勧めします。
Q9.睡眠時無呼吸症候群診断に最も有用な検査は何ですか?
検査施設で行う睡眠ポリグラフ検査(PSG/ピー・エス・ジー)が最も有用です。
睡眠ポリグラフ検査は、施設に宿泊して脳波や心電図などを測定する睡眠時無呼吸症候群の精密検査です。特に、簡易モニター検査で中等症と診断された患者さんが、CPAP治療による治療を開始する場合に、睡眠ポリグラフ検査する必要があります。
ツノクリでは、睡眠ポリグラフ検査をすることができません。睡眠ポリグラフ検査を希望された場合には、検査ができる病院や施設に紹介状を作成してお渡しします。
睡眠時無呼吸症候群の治療
Q10.睡眠時無呼吸症候群の一般的な治療法は何ですか?
持続陽圧呼吸療法(CPAP/シーパップ)と呼ばれる装置によって治療します。
CPAPは、毎晩、就寝前に空気の漏れが無いように鼻(もしくは顔面)にマスクをしっかりと固定し、機器から空気を流し続けて、就寝中の呼吸を補助する方法です。
Q11.CPAPは簡単にできますか?
ひとにもよりますが、それほど簡単ではありません。
皆さんにとって、毎晩、就寝中に鼻(もしくは顔面)にマスクをつけることは、お世辞にも嬉しくないと思います。しかしながら、治療が必要であることを理解しながら、我慢して治療を続けていくうちに、それほど嫌にならない患者さんが増えてきます。特に、重症の閉塞性睡眠時無呼吸症候群の患者さんの中には、CPAPによってぐっすり眠ることできるため、手放せなくなる患者さんもいます。一方で、いくら続けてもCPAPをすることが難しい患者さんもいます。その時には、相談の上で治療を断念することもあります。
Q12.CPAPを使うことは大切ですか?
はい、大切です。
CPAPの効果をしっかり得るためには、少なくとも、週に5日、かつ1日4時間(6時間で昼間の眠気が減り、7.5時間で元気になります)、機器を使用する必要があります。ただし、不快感を伴うため、最初から完璧にできる患者さんはほとんどいません。できるだけ頑張って装着して、ゆっくりと頻度と時間を増やしていくのが、しっかりと治療するコツになります。
ツノクリでは、睡眠時無呼吸症候群の患者さんに、できるだけ毎晩、できるだけ長い時間、CPAPを使ってもらいたいと考えています。ただ、どうしても使うことが難しい患者さんは、無理にCPAPを使う必要はありません。お金もかかる治療なので、治療による有益性と天秤にかけて中止する勇気も必要です。ただし、お客さんを乗せるお仕事(バスやタクシー運転手)をしている患者さんや、心臓病で入退院を繰り返す患者さんは、嫌でも治療を続けてもらわなければなりません。頑張って治療を続けられるように、ツノクリもお手伝いさせてもらいます。
Q13.CPAPは途中でやめても大丈夫ですか?
いいえ、中断すると元に戻ってしまうことがわかっています。
持続陽圧呼吸療法を中断すると、もとの状態(無呼吸低呼吸指数、血圧、症状など)に戻ってしまいます。ただ、多くの理由で中断してしまう患者さんが多いのも事実です。ツノクリでは、頑張ってCPAPを続けることをお勧めしますが、治療を中断することの意味を分かっていれば、無理に治療を続ける必要はないとも思っています。
閉塞性睡眠時無呼吸症候群の症状
Q14.閉塞性睡眠時無呼吸症候群にはどのような症状がありますか?
最も重大な症状は、就寝中の窒息感と息苦しさです。
就寝中の窒息感と息苦しさがある人は、ない人と比べて、閉塞性睡眠時無呼吸症候群(C-SAS)(→Q4)の可能性が約3.3倍になります。他にも、パートナーが無呼吸に気が付く(1.5倍)、朝に頭痛が起きる(1.5倍)、日中に長い時間眠ってしまう(1.3倍)ことなどで気が付かれることがあります。いびきは有名な症状ですが、必ずしもC-SASと関係していません(→Q15)。
Q15.(お酒を飲んだ日の)夜のいびきは、閉塞性睡眠時無呼吸症候群でしょうか?
いいえ、可能性はありますが、必ずしも閉塞性睡眠時無呼吸症候群(C-SAS)ではありません。
一般的に、いびきはC-SASのわかりやすい症状ですが、いびきをかく人がC-SASである割合は、いびきをかかない人の約1.1倍です。また、飲酒とC-SASの関係は良く知られています。日常的にお酒を飲む人は、お酒を飲まない人と比べてC-SASが多いことが知られ、C-SASの患者さんが、お酒を飲むと、睡眠時無呼吸症候群の症状が悪くなることが分かっています。
ツノクリでは、(お酒を飲んだ日の)夜にいびきをかく人には、まず、睡眠時無呼吸症候群の簡易モニター(アプノモニター)(→Q8)を行うことを勧めています。ただ、いびきをかいても、睡眠時無呼吸症候群に関係する症状や病気(肥満、心臓病、脳卒中など)が無い場合には、必ずしも検査をしなくても良いと考えています。
閉塞性睡眠時無呼吸症候群に関係する病気
Q16.閉塞性睡眠時無呼吸症候群は高血圧と関係がありますか?
はい、C-SASの患者さんと高血圧は大きな関連があります。
C-SASと高血圧症は、一緒に見られることが多い病気です。それも、C-SASが、高血圧の原因(→「高血圧について」を参照)になるため、CPAPによる治療で、高血圧症が良くなることがあります。ただし、良くなる程度は、収縮期血圧で3mmHg、拡張期血圧で2mmHgくらいですので、大きな期待を寄せるのは禁物です。太っている人であれば、頑張って減量することで、より大きく血圧を下げる効果を期待できます。
Q17.閉塞性睡眠時無呼吸症候群は糖尿病と関係しますか?
はい、C-SASの患者さんは糖尿病になりやすいです。
太っている人がC-SASにも、糖尿病にもなりやすいことは良く知られています。ただ、C-SASの患者さんは、同じ体格の人と比べても、より糖尿病になりやすいことが知られています。一方で、糖尿病の人がCPAPによる治療をしても、糖尿病は改善しないことが分かっています。
閉塞性睡眠時無呼吸症候群の治療
Q18.CPAPに副作用はありますか?
はい、どんな治療にも副作用が出ることはあります。
CPAPによる治療では、空気が漏れないように鼻(もしくは顔面)にマスクを着けて、就寝中に空気を流し続ける機器を使います。そのため、副作用として、マスクの不快感や、マスクが触れる部位のかぶれ、乾燥症状などがあります。CPAPによる乾燥を防ぐため、加湿器を備えている機器がほとんどですが、加湿器の管理に手間がかかります。また、CPAPによる窒息の心配をする患者さんがいますが、CPAPで窒息することはありません(→Q19)。
Q19.持続陽圧呼吸療法で、息ができなくなってしまうことはありますか?
いいえ、ありません。
空気が漏れないように鼻(もしくは顔面)にマスクを密着させることから、空気が流れてこなくなったら窒息してしまうのではないかと心配する患者さんがいます。CPAPが止まったり、壊れてしまったりしても、マスク内に風圧がかからなくなるだけです。ホースは、常に外気(大気)と繋がっているためスカスカです。分かりやすく言えば、マスクに繋がるホース内部に扇風機が取り付けられているのに似ています。ホース内の扇風機が止まっても、呼吸はできますよね。
Q20.閉塞性睡眠時無呼吸症候群の口腔内装置(マウスピース)とは何ですか?
閉塞性睡眠時無呼吸症候群を改善する目的で作られた口腔内装置のことです。
C-SASの患者さんでは、あおむけになったときに、重力で下顎が落ち込むことにより気道が閉塞もしくは狭窄してしまいます。そのため、口腔内装置(マウスピース)を利用して下顎を突き出させ、物理的に気道が閉塞もしくは狭窄しないようにすることができます。その際、歯医者さんに自分に合うマウスピースを作ってもらう必要があります。この治療がうまくいけば、CPAP治療と同じくらいの効果が期待できますが、長い年月にわたってどのような効果や副作用があるかは、あまり分かっていません。
ツノクリでは、希望があれば、歯科で自分用のマウスピースを作ってもらうための紹介状を書いてお渡しします。通常、マウスピースを作ってくれる歯医者さんに受診すれば、保険診療でマウスピースを作ってもらうことができます。その際、必ず、受診前に歯医者さんに連絡して、保険診療でマウスピースが作成可能かご自身でのご確認をお願いします。
Q21.閉塞性睡眠時無呼吸症候群で口腔内装置(マウスピース)を使う際の注意点はありますか?
はい、定期的に歯医者さんにかかりましょう。
マウスピースは、CPAPによる治療と同じくらいの効果が期待できるだけでなく、安く、使いやすいといった利点があります。そのため、マウスピースによる治療が効果的な場合には、マウスピース使用の継続をお勧めしますが、以下の2つの理由から、定期的に歯医者さんで診療してもらう必要があります。
-
- 1. マウスピースを数年間使うと、ゆっくり形が変わってきてしまいます
- 2. マウスピースを10年ぐらい使うと、歯のかみ合わせが悪くなってしまいます
Q22.閉塞性睡眠時無呼吸症候群を良くする方法はありますか?
はい、太っている患者さんなら、痩せると良くなる場合があります。
太っている患者さんがC-SASの場合は、食事や運動に気を使い、体重を減らすことで、無呼吸低呼吸指数が改善する可能性があることが分かっています。ただし、C-SASを治すには、少なくとも10%程度の体重減少が必要なことが分かっており、なかなか達成できるものではありません。
ツノクリでは、C-SASでなくても、太っている人には、減量することをお勧めしています。C-SASの患者さんが、10kgぐらいの減量に成功した場合には、改めて、無呼吸低呼吸指数の検査をすることをお勧めしています。
Q23.閉塞性睡眠時無呼吸症候群は、体位を変えることで改善しますか?
改善する可能性はありますが、とても難しいです。
C-SASの患者さんは、あおむけになったときに、重力で下顎が落ち込むことにより気道が閉塞もしくは狭窄します。そのため、よこになって眠ったり、座って眠ったりすることによって改善します。ただ、普通の人が、眠っている間、ずっと同じ体位でいることはとてもできることではありません。むしろ、ずっと同じ体位でいると、体の重みが、長い間、同じ場所にかかるため、床ずれができてしまいます。
現在、就寝中の体位を調節する装置を使うことによりC-SASを改善できるか、欧米で研究が進められています。そのうち、特殊なベッドに寝ることによってC-SASが良くなるかもしれません。
Q24.閉塞性睡眠時無呼吸症候群で睡眠薬を飲むことができますか?
はい、不眠症であれば睡眠薬を使うこともあります。
C-SASの約半数の患者さんに不眠症があり、眠れないことにより、CPAP治療を継続することが難しくなります。そのため、CPAP治療を継続するため睡眠薬を使用することがあります。ただし、睡眠薬の内服により、気道の閉塞や狭窄が悪化してしまう恐れがあります。そのため、C-SASの患者さんに安全に使うことができる下記の睡眠薬を利用することが望ましいとされています。
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- ・メラトニン受容体作動薬 ラメルテオン(商品名:ロゼレム)
- ・非ベンゾジアゼピン系睡眠薬 ゾルピデム、エスゾピクロン(商品名:ルネスタ)
- ・オレキシン受容体拮抗薬 スボレキサント(商品名:ベルソムラ)
Q25.閉塞性睡眠時無呼吸症候群で自動車の運転は大丈夫ですか?
絶対に禁止というわけではありません。ただし、昼間の眠気が強い人や居眠り事故を起こしたことのある人、あるいは客さんを乗せる仕事(バスやタクシー運転手など)をしている患者さんでは、CPAPによる治療をする必要があります。
調査では、C-SASの患者さんは、睡眠時無呼吸症候群で無い人と比べ、わずかながら交通事故を起こす割合が高いとされています。しかし、睡眠時無呼吸症候群の患者さんが引き起こす交通事故では、被害が大きくなる特徴があります。それに加え、C-SASの患者さんが、自分の病気を知っていながら居眠り事故を起こした場合には、犯罪者として刑事責任を問われる可能性があります。
ツノクリでは、皆さんだけでなく、皆さんの周りの人達にも、幸せになってもらいたいと考えています。そのため、昼間の眠気が強い人や居眠り事故を起こしたことのある人は、まず、睡眠時無呼吸症候群の検査を受けることをお勧めしています。また、このような症状がある人で、お客さんを乗せる仕事(バスやタクシー運転手など)に就いている場合には、睡眠時無呼吸症候群の検査を受けてもらう必要があります。検査によってC-SASと診断されれば、嫌でもCPAPを続けてもらう必要があります。
睡眠時無呼吸症候群と関連する睡眠について
Q26.一晩で眠る時間はどのくらいですか?
年齢によって変わりますが、成人で7~9時間ぐらいです。
就寝時間(夜に眠る時間)は、年齢とともに減少し、成人では7~9時間で一定になります。一方、睡眠時間(一日に眠る時間)は、65歳を越えると徐々に増え、75歳を越えると8~10時間となり、寝ている最中にたびたび起きたり、朝早く目が覚めたり、昼間に居眠りすることが増えてきます。
Q27.REM(レム)睡眠とは何ですか?
体は寝ていても、脳は完全には寝ていない(目がきょろきょろしている)状態です。
レム睡眠の時間は、年齢とともに減少し、成人では約1時間~1時間半で一定になります。レム睡眠は一晩で3~6回繰り返されます。寝てすぐに5~10分、朝起きる直前のレム睡眠は20~40分続きます。レム睡眠では、具体的な夢を見ることが多く、朝起きた時に、直前にみていた夢が思い出される時があります。一方で、いわゆる「金縛り」は、体は寝ていますが、脳は完全に寝ていない状態を指しますので、レム睡眠中に起きることがあります。
第4版 2024年1月11日