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脂質異常症(高コレステロール血症、高中性脂肪血症)

はじめに
私たちは、ほんの100年前まで飢餓と隣り合わせで生きてきました。そのため、私たちは、飢餓に備えてエネルギーをさまざまな方法によって蓄えてきました。なかでも脂質(中性脂肪)は、飢餓時代の理想的なエネルギー貯蔵庫でしたが、現代の過剰なエネルギー貯蔵は肥満をもたらしました。さらに悪いことに、水(血液)に溶けない性質がわざわいして、過剰な脂質(コレステロール)は、血管の壁に溜まるようになったのです。これが、動脈硬化です。

近年の日本人の総コレステロール値の平均はおよそ200mg/dLですが、昔ながらの生活を続けている狩猟民族の総コレステロール値は100から140mg/dLであることが分かっています。つまり、近年の日本人の高いコレステロール値は、生活習慣(運動不足と食生活)によってもたらされていると考えられ、動脈硬化は生活習慣病の一つであるとされています。

私は、昭和大学の海外留学生として、米国農務省とタフツ大学が共同で運営する加齢ヒト栄養研究センター(Jean Mayer USDA Human Nutrition Research Center On Aging, Boston, USA)に2年間にわたり滞在し、脂質(特に魚の油)がヒトの体に与える良い影響と悪い影響について研究してきました。。

ツノクリでは、脂質異常症の患者さんが、将来、頭や首、心臓の血管が狭くなったり、つまったりしないように、食事や運動の指導をしながら、脂質異常症と上手にお付き合いする方法を提案します。ただし、食事や運動によって得られる効果は限られているため、お薬を使うこともあります。特に高コレステロール血症を改善するお薬は、世界中で広く使われ、効果が確実で安全性も高い(副作用が少ない)ことが分かっています。ツノクリは、皆さんにとって大切なことは、薬を飲むかどうかではなく、できるかぎり長い間、元気で充実した生活を送ることだと思っています。

脂質ついて

Q1.脂質とは何ですか?

脂質とは、血液(水)に溶けない成分(脂肪酸やコレステロール)のことです。

脂質は、三大栄養素(炭水化物、蛋白質、脂質)の一つで、体にとってのエネルギー源であるだけでなく、体そのもの(細胞膜や皮膚)やホルモンを作る原料にもなります。脂質は、単独では血液に溶けないため、血液で運ばれる際にはタンパク質と結合する必要があります。なかでもコレステロールは、結合するタンパク質の種類によって、悪玉として扱われたり、善玉として扱われたりします(→Q3, 4)。

Q2. 血液検査でわかる脂質にはどのような種類があるのですか?

主に、コレステロールとトリグリセライド(TG)があります。

コレステロールは、化学的にコレステロール骨格という構造をもつ物質の集まりで、主に体そのもの(細胞膜や皮膚)やホルモンを作る原料になります。一方、中性脂肪は、3つの脂肪酸にグリセリンが結合したものを指し、主にエネルギー源として利用されます。

Q3. 悪玉コレステロールとは何ですか?

動脈硬化を起こすLDL(エルディーエル)コレステロールの別名です。

コレステロールは、単独で血液中に溶けないため、血液で運ばれる際にはタンパク質と結合する必要があります。その結合するタンパク質の種類によって、コレステロールの性質は変わります。

コレステロールは、体内で血液中を流れながら回っています。肝臓で作られたコレステロールは、タンパク質(アポB)と結合して、LDLという粒子になり、血液中を流れながら、体の隅々まで届けられます。一方で、通常、体の隅々で必要とされなかったコレステロールは、LDL粒子として、そのまま肝臓に戻ってきます。ただ、血液中を流れるLDL粒子が多くなってくると、一部は、動脈の壁に取り込まれてしまうことがあります。これが動脈硬化になります。このLDL粒子中のコレステロールを、LDLコレステロールと呼び、その性質から悪玉コレステロールとも呼ばれます

Q4.善玉コレステロールとは何ですか?

動脈硬化を防ぐHDL(エイチディーエル)コレステロールの別名です。

コレステロールは、単独で血液中に溶けないため、血液で運ばれる際にはタンパク質と結合する必要があります。その結合するタンパク質の種類によって、コレステロールの性質は変わります。

体の隅々までコレステロールを届けるためのLDL粒子(→Q3)が、血液中に多くなってくると、一部は、周りの動脈の壁に取り込まれてしまうことがあります。一方で、動脈の壁に取り込まれてしまったコレステロールは、血液中に流れるタンパク質(アポA)が引き抜き、HDLという粒子となって、再び肝臓に戻ってきます。このHDL粒子中のコレステロールを、HDLコレステロールと呼び、その性質から善玉コレステロールとも呼ばれます

脂質異常症の診断と治療

Q5.脂質異常症はどのように診断されますか?

脂質異常症には診断基準があります。

この診断基準は、特別な病気をもつ患者さん(→Q7)には当てはまりません。

〇 脂質異常症の診断基準

検査項目

検査値

診断名

LDLコレステロール

140 mg/dL以上

高コレステロール血症

低HDLコレステロール血症

40 mg/dL未満

高トリグリセライド血症

トリグリセライド(空腹時)

150 mg/dL以上

高トリグリセライド血症

Q6.脂質異常症と診断されたら、すぐに治療が必要ですか?

いいえ、必ずしも、全員が治療を受けなければならないわけではありません。

60歳までの女性で、特別な病気(→Q7)が無ければ、LDLコレステロール 160mg/dLまでは積極的な治療の必要ありません。ただし、一般的には、年齢に従ってLDLコレステロールは上昇するため、若いうちから生活習慣(運動不足や食生活)を改善する必要があります。日本人での未治療でのLDLコレステロール160mg/dL以上は、男性で上位8%、女性で上位10%に当たります。

Q7.特別な病気をもつ患者さんの脂質異常症はどのように診断されますか?

冠動脈疾患(→「冠動脈疾患」を参照)がある患者さんは、脂質異常症の診断に関わらず、お薬で積極的に治療することが望ましいとされています。

糖尿病、慢性腎臓病、脳梗塞、閉塞性動脈硬化症がある患者さん(高リスク患者)は、(特に男性では)動脈硬化の危険が高いとされ、多くの場合、高リスクの診断基準が用いられます。

〇 高リスク患者における脂質異常症の治療目標

検査項目

治療目標値

LDLコレステロール

 120 mg/dL未満

HDLコレステロール

40 mg/dL以上

トリグリセライド(空腹時)

150 mg/dL未満

Q8.家族性高コレステロール血症とはどんな病気ですか?

遺伝的にLDLコレステロールが高く、動脈硬化の危険が高い状態です。

家族性高コレステロール血症は、①高LDLコレステロール血症 ②若年での冠動脈疾患の発症 ③腱や皮膚の黄色腫 が主な特徴で診断基準があります。

家族性高コレステロール血症(ヘテロ型)の診断基準

(以下の3つの診断基準のうち2つ以上あてはまる場合に診断されます)

  • ●未治療でのLDLコレステロール値が180mg/dL以上
  • ●腱や皮膚の黄色腫またはレントゲン検査でのアキレス腱の幅が9mm以上
  • ●2親等以内の家族性高コレステロール血症もしくは若年での冠動脈疾患の発症

日本人での未治療でのLDLコレステロール180mg/dL以上は、男性で上位2.6%、女性で上位3.6%に当たります。これらの患者さんが未治療で経過すると、若年での冠動脈疾患の発症率が20倍になるという報告もあります。家族性高コレステロール血症は、動脈硬化性疾患で若いうちに亡くなってしまう患者さんが多いため、積極的な治療(目標:LDLコレステロール100mg/dL未満)が必要です。

ツノクリでは、危険であることが分かっているのに、若いうちに心筋梗塞や脳梗塞を発症してしまう患者さんがいることを、とても残念に思っています。家族性高コレステロール血症は、動脈硬化の発作が起きるまで、自覚症状がありません。ツノクリでは、安易にお薬を使うことには反対ですが、皆さんの遺伝子が高コレステロール血症をもたらすのであれば、積極的かつ地道にお薬を使って治療することが大切だと思っています。

Q9.中性脂肪が高いと動脈硬化の病気をおこしますか?

はっきりとわかっていませんが、動脈硬化をおこしやすくなります。

中性脂肪は主にヒトにとってのエネルギー源ですが、中性脂肪の高い患者さんは、冠動脈疾患(→「冠動脈疾患」を参照)や脳梗塞を起こしやすいことが分かっています。ただし、悪玉コレステロール(LDLコレステロール)と比べると、動脈硬化との関連は弱く、中性脂肪は糖尿病や肥満、飲酒などに強い影響を受けることが分かっています。そのため、中性脂肪が高い場合には、まず、食生活をはじめとした生活習慣病の改善が大切になります。一方で、中性脂肪が1,000mg/dLを超える場合には、急性膵炎(膵臓から分泌される食べ物の分解消化酵素によって、自分の体の臓器を分解消化してしまう状態)になる危険性があるため、お薬による治療をお勧めします。

Q10. HDLコレステロールが低いと動脈硬化の病気をおこしますか?

はい、動脈硬化を起こしやすくなります。

HDLコレステロールは、低くなればなるほど動脈硬化の危険が高くなります。一般的に、HDLコレステロールは、有酸素運動や飲酒によって増加し、喫煙や肥満によって減少します。そのため、HDLコレステロールが低い場合には、禁煙と減量、そして有酸素運動をお勧めしています。一方で、お薬でHDLコレステロールを増加させることはできますが、その効果は証明されていません。

ツノクリでは、HDLコレステロールが低い患者さんには、生活習慣の改善を指導しますが、HDLコレステロールを増加させる目的でお薬を使うことはお勧めしていません。

第一版 2021年07月01日

 
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