メニュー

めまいについて

はじめに

 

 一度でもめまいを経験した人にとって、めまいはとても怖い症状です。ただ、一旦めまいが軽くなってしまえば、医療機関を受診しない人がほとんどです。しかし、めまいが軽くなっても、原因となる病気について考えることはとても大切です。
 良く知られているめまい症は、良性発作性頭位めまい症(→Q5)です。一般的には、朝に目が覚めて体を起こそうとすると、突然、目の前がぐるぐると回りはじめます。とても起きていられないため、再びベッドに横になると、また目の前がぐるぐると回ります。頭を動かすとめまいが起きることがわかると、めまいが起きないよう、頭を動かさずにじっとします。数分から数十分して、恐る恐る動き始めると、めまいは軽くなっています。めまいを繰り返すのではないかという不安は残りますが、多くの人は、その日のうちにめまいはなくなり、医療機関も受診しません。
 良性発作性頭位めまい症のようなめまい症では、必ずしも、医療機関を受診する必要はありませんが、めまい症の中には、命にかかわる重大なめまい症(→Q10)や、耳が聞こえにくくなってしまうめまい症(→Q8)もあります。これらの重大なめまい症は、良性発作性頭位めまい症と異なり、できるだけ早く適切な治療を受けることが大切です。そのため、めまい症では、めまいが治まっても、精密検査や治療を要するめまい症かどうかを判断しなければなりません。
 めまいの原因の多くは、内耳(耳の奥)にある前庭器官(→Q2)の異常であり、耳鼻咽喉科の先生たちの得意分野です。ツノクリでは、めまいに関する精密検査はできませんが、どのような原因でめまいが起き、また、すぐに専門の先生を受診する必要があるかを一緒に考えることはできます。めまい症の中には、できるだけ早く治療を開始することが望ましい病気が潜んでいます。めまいが起きた時には、これらの重大な病気を見逃さないことが大切です。

 目 次

Q1.めまいはなぜ起きるのですか?
Q2.どのような異常でめまいが起きますか?
Q3.めまいの症状にはどの様なタイプがありますか?
Q4.めまい症の原因はどのように診断しますか?
Q5.頭を動かすと突然起こる、激しい回転性めまいは、どのような病気を疑いますか?
Q6.突然、回転性めまいが起きて、耳鳴りや聴力低下を伴う場合、どのような病気を疑いますか?
Q7.めまいが片頭痛の発作中に起きるのは、どのような病気ですか?
Q8.突然、片側の耳が聞こえにくくなり、めまいを伴うのは、どのような病気ですか?
Q9.連日、ふわふわとしためまいが続くのは、どのような病気ですか?
Q10.めまいを起こす脳や神経の異常には、どのような病気がありますか?

めまいはなぜ起きるのですか?

 めまいは、バランス感覚(空間見当識)に異常が生じることによって起きます。
 ヒトは、体のバランスを保持するため、常に、無意識に、自分の体がどのような状態にあるかを把握しています。その能力は、空間見当識と呼ばれ、眼(視覚)、耳(位置覚)、筋肉、関節(振動覚や触覚)などから得られた情報を、脳に伝達し、脳がそれらの情報を処理することによって維持されています。空間見当識を維持できなくなる、つまり、眼や耳などの感覚器官、その情報の伝達路、または脳の情報処理装置に異常が生じると、めまいが起きます。

Q2どのような異常でめまいが起きますか?

 さまざまな原因がありますが、主に、三半規管の異常によりめまいが起きます。


 耳の奥(内耳)には、音を聞く器官(蝸牛)だけでなく、体の位置や動きを感じる器官(前庭器官)があります。前庭器官には、回転運動を感じる3つの半規管(いわゆる三半規管)と直線運動を感じる耳石器があります。異常を生じる頻度が最も高いのは三半規管です。また、このような感覚器官の異常のほかにも、情報伝達路である前庭神経や、情報処理装置である脳(特に小脳)や、脳へ血液を送る動脈などに異常が生じると、めまいが起きることがあります。

Q3.めまいの症状にはどの様なタイプがありますか?

 めまいの症状には、主に4つのタイプがあります。
 めまいの症状には、ぐるぐる回る「回転性めまい」、ふわふわと浮く「浮動性(動揺性)めまい」、目の前が暗くなり意識が遠のく「眼前暗黒感(と失神)」、ものが揺れて見える「動揺視」の4つがあります。一般的に、突然起きる「回転性めまい」には、前庭器官(→Q2)の異常である良性発作性頭位めまい症(BPPV)(→Q5)メニエール病(→Q6)などが多いとされ、慢性的な「浮動性(動揺性)めまい」は、持続性知覚性姿勢誘発めまい(PPPD)(→Q9)が多いとされます。ただし、めまいのタイプによる病気の診断は、あまり当てにならないことも知られています。

Q4.めまい症の原因はどのように診断しますか?

 患者さんの自覚症状からめまい症を診断するチャートがあります。
 診断チャートは、必ずしも全てのめまいが当てはまる訳ではありませんが、めまい症の診断をするうえで、とても重要なヒントになります。

Q5.頭を動かすと突然起こる、激しい回転性めまいは、どのような病気を疑いますか?

  頭を動かすと突然起きる回転性めまいは、良性発作性頭位めまい症(BPPV)を疑います
 良性発作性頭位めまい症は、内耳の耳石器から脱落した耳石が、三半規管の中に迷入することによって生じるめまいで、地域の中核医療機関をめまいで受診する患者さんの約4割を占めます。50~70歳代の女性に多く、また、喫煙や肥満、高血圧や脂質異常症などの生活習慣病と関連しており、脳卒中や片頭痛を持つ患者さんに多いとされています。
 良性発作性頭位めまい症での典型的なめまいは、頭を動かして数秒後に起きる、激しい回転性めまいです。めまいは、頭をもとに戻すと数秒程度で、また、じっとしていても1分前後で落ち着きます。一旦、めまいが起きると、めまいが治まるまで頭を動かせなくなってしまう人がほとんどです。また、良性発作性頭位めまい症では、難聴や耳鳴りなどの聴覚障害を伴うことはありません
 良性発作性頭位めまい症によって起きる激しいめまいでは、まず、じっとしていることです。動けば、めまいはひどくなり、また、無理に動くと転倒したりや嘔吐したりすることがあります。激しいめまいが続いている場合には、(7%重曹水の)点滴や制吐薬、抗不安薬などを使用することがあります(ただし、ツノクリには点滴のお薬はありません)。一方、クリニックに歩いて受診できる程度に改善している場合には、めまいの改善と予防に、ジフェニドール、ベタヒスチン、アデノシン三リン酸などの内服薬を処方します。
 また、頭部の運動により半規管内に迷入した耳石を半規管外に逃がす、耳石置換法と呼ばれる治療法があります。耳石置換法は、上手な先生がやれば有効率が高い(60~80%)とされていますが、ツノクリではできませんので、希望される方はめまい症の治療に精通している耳鼻咽喉科の先生に相談してみて下さい。

Q6.突然、回転性めまいが起きて、耳鳴りや聴力低下を伴う場合、どのような病気を疑いますか?

 聴力障害を伴う、突然の回転性めまいは、メニエール病を疑います
 三半規管のある内耳に、内リンパ液という液体が過剰に満たされる(内リンパ水腫)とメニエール病が起きますが、内リンパ水腫が生じる原因は、分かっていません。30~50歳代で発症することが多く、ストレスや疲労などで生じるため、自律神経との関連が考えられています。
典型的なメニエール病では、突然の回転性めまいに加え、めまいの前、もしくは間に、耳鳴りや聴力低下を伴います。また、回転性めまいは数時間続き、一旦は消失しますが、日、月、もしくは年単位で同じ症状を繰り返します。同じ症状を繰り返す過程で、数年かけて耳が(通常は低音領域から)聞こえにくくなってきます。
 メニエール病では、規則正しい生活を送り、ストレスを溜めないことが大切です。また、内リンパ水腫を改善するために、ステロイド薬や利尿薬(イソソルビド)などを使うことがあります。数年間かけて耳が聞こえにくくなることから、定期的な聴力検査などが必要であり、耳鼻咽喉科での診察と治療をお勧めします。

Q7.めまいが片頭痛の発作中に起きるのは、どのような病気ですか?

 片頭痛の発作中にいろいろなタイプのめまいを生じる場合は、前庭性片頭痛を疑います。
 めまいの半数以上に片頭痛発作を伴うと、前庭性片頭痛と診断されます。めまいに頭痛を伴うことが多い場合には、病気の本態は片頭痛のため、めまい症治療でなく片頭痛治療を試すことをお勧めします。
 以下に、ツノクリ「頭痛について」内の「片頭痛について」の特徴を一部改編して抜粋します。
 「片頭痛は、こめかみのあたりにズキンズキンとした痛みが、繰り返し起こる頭痛です。典型的な片頭痛では、頭の片側もしくは両側のこめかみのあたりにズキンズキンと拍動する痛みを繰り返します。片頭痛の特徴は、① ズキンズキンとする拍動性、② 4~72時間の持続、③ 片側性、④ 吐き気、⑤ 日常生活に支障をきたす、からなり、このうち4つを満たせば片頭痛の可能性が高くなります。わが国で、年間1回以上の片頭痛を経験する人は、小学生で3.5%前後ですが、年齢と共に増加し、30~50歳の女性では20%前後になります。その後は、徐々に減少します。」
 前庭性片頭痛では、めまいのタイプも程度もさまざまで、めまいの持続時間も5分間から3日間と幅があります。前庭性片頭痛によるめまいには、片頭痛に準じたお薬(鎮痛剤やトリプタンなど)を使用します。ツノクリでも、前庭性片頭痛が疑われた場合には、片頭痛治療をすることができます。めまいに伴って頭痛が出現する場合には、ツノクリに相談してみて下さい。

Q8突然、片側の耳が聞こえにくくなり、めまいを伴うのは、どのような病気ですか?

 突然、片側の耳が聞こえなくなり、めまいを生じる場合には、突発性難聴を疑います
 突発性難聴では、前触れもなく突然、片側の耳が聞こえにくくなり、耳鳴りやめまいなどを伴います。原因は不明で、耳が聞こえにくくなると同時に、耳鳴りや耳の詰まった感じ(耳閉塞感)を伴うこともあります。また、約半数の患者さんで、さまざまなタイプのめまいが起きます。めまいは、耳が聞こえにくくなる前後に生じ、発作は1回限りで、繰り返すことはありません。このような症状を繰り返す場合には、メニエール病(→Q6)を疑います。
 突発性難聴は、40~60歳代に多く、ストレス、過労、睡眠不足などの生活習慣、また糖尿病と関係があることが分かっています。耳の聞こえにくさは、軽ければ自然に良くなる場合もありますが、2週間以内に治療しなければ改善が期待できません。そのため、突発性難聴では、できるだけ早く治療を開始することが大切です。1週間以内に適切な治療を開始すれば、聴力障害については4割で完治し、5割で改善が認められます。聴力検査を繰り返し必要とするため、耳鼻咽喉科での定期的な診察と治療が必要です。
めまい症では、めまい発作が落ち着いた後でも良いので、必ず、両方の耳の聞こえを確認してください。具体的には、片方の耳のそばで指をこすり合わせて、右左の耳の聞こえ具合に差がないか、確かめて下さい。音の聞こえ方が左右で違う場合には、なるべく早く耳鼻咽喉科に受診して下さい。

Q9.連日、ふわふわとしためまいが続くのは、どのような病気ですか?

 3か月以上にわたって、ほとんど毎日生じる浮動性(動揺性)めまいは、持続性知覚性姿勢誘発めまい症(PPPD)を疑います
 持続性知覚性姿勢誘発めまい症では、少なくとも3か月以上、浮動性(動揺性)めまいが、ほとんど毎日続きます。また、起立や歩行、エレベーターでの移動などの、姿勢の変化や視覚からの情報過多によって、めまいがひどくなることがあります。原因不明のめまい症の約半分、また地域の中核医療機関を受診するめまい症の患者さんの約1割が、持続性知覚性姿勢誘発めまい症と考えられ、決して珍しい病気ではありません
 診断には、「新潟持続性知覚性姿勢誘発めまい症質問票」が参考になります。急に立ち上がる、急に振り向くなどの動作、電車やバスやエレベーターに乗るなどでひどくなる場合には「体動」の影響、通常の歩行、背もたれの無い椅子にじっと座る、同じ体制での立位保持などでひどくなる場合には「立位・歩行」の影響、陳列棚を見る、テレビや映画などを見る、スマートフォンのスクロール画面を見るなどでひどくなる場合には「視覚」の影響が強く、いずれも、持続性知覚性姿勢誘発めまい症の特徴とされています。
 持続性知覚性姿勢誘発めまい症は、不安やうつ状態との関連が指摘されています。そのため、不安症状やうつ症状が強い患者さんでは、抗うつ薬が有効とされていますが、それ以外の患者さんでの抗うつ薬の効果ははっきりと分かっていません。
 ツノクリでは、持続性知覚性姿勢誘発めまい症が疑れる場合、その診断と治療についてはめまいの専門医に受診することをお勧めしています。毎日、めまいで日常生活に支障をきたし、脳の画像(MRIなど)検査で異常が見られない場合には、日本平衡めまい医学会認定の「めまい相談医」に相談してみてはいかがでしょうか。

Q10.めまいを起こす脳や神経の異常には、どのような病気がありますか?

 さまざまな、脳の病気や脳に血液を送る血管の障害が考えられます。
 めまいを引き起こす脳や神経の病気には、脳梗塞、脳出血、脳血管障害、小脳腫瘍、聴神経腫瘍、椎骨脳底動脈循環不全などがあります。脳の中でも、小脳や脳幹と呼ばれる部位が、体のバランス感覚(空間見当識)を保つうえで大きな役割を果たしています。そのため、小脳や脳幹に異常が起きると、めまいを起こしやすくなります。
 一般的に脳梗塞や脳出血では、めまいは突然起こり、徐々に改善しますが、数日から数週間で慢性化します。一般的には、(特に目をつぶって)片足立ちができなくなったり、まっすぐ歩くことができなくなったりします。また、脳出血では、めまいに伴って、激しい頭痛が起きることもあります。一方、椎骨脳動脈循環不全では、同じようなタイプのめまいが繰り返し起こり、頻度や程度は徐々に悪化することがあります。また、(聴神経腫瘍を含む)脳腫瘍によるめまいは、軽い症状から始まり、脳腫瘍の増大により徐々に悪くなることが多いとされています。
 このように、脳や脳神経の病気では、さまざまなタイプのめまいが、さまざまな頻度と程度で起きるため、原因の分からないめまい症と判断される場合もあります。そのため、ツノクリでは、めまいが長く続く、または繰り返し起こる場合には、一度、脳の画像(MRI、MRAなど)検査をお勧めしています。

第1版 2023年10月15日

▲ ページのトップに戻る

Close

HOME