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大腸がん検診(便潜血検査)について

はじめに

 このページを見ている方の中には、自分や自分の大切な人が、大腸がん検診で便潜血陽性の判定を受けた方がいると思います。通常、大腸がん検診で陽性と判定されると、不安や恐怖に襲われ、現実から逃げ出したくなります。しかし、そのような方にこそ、少し落ち着いて、このページに目を通していただきたいと思っています。
 今や、日本人の二人に一人はがんと診断され、そのうち最も多いのが大腸がんです。そして、全てのがんにおいて大切なことは、早く見つけて早く治療することです(早期発見と早期治療)。大腸がん検診で便潜血陽性の判定を受けたにもかかわらず、大腸内視鏡検査を受けないことは、早期発見できたはずのがんを見過ごしてしまう可能性があります(→Q6)。 また、便潜血陽性の判定を受けた方に、大腸内視鏡検査を行うと、その多くが病気の無い正常大腸(→Q5)であり、大腸がんが発見されても早期がんの割合が高いことが分かっています。早期の大腸がんであれば、多くが大腸内視鏡治療により根治可能で、5年生存率は90%に達します。もし、自分や自分の大切な人が大腸がんの可能性があるなら、頑張って大腸内視鏡検査を受ける、もしくは受けてもらう必要があることは、疑いようがありません。大腸がんについて、より詳しく知りたい方は、国立がん研究センター中央病院の大腸外科のホームページを参考にしてみてください。
 ツノクリでは、大腸がん検診で1回でも便潜血陽性の判定を受けた方には、大腸内視鏡検査を強くお勧めしています。確かに、大腸内視鏡検査は、決して楽な検査とは言えません。
 また、ツノクリでは大腸内視鏡検査を実施していません。健康診断などの大腸がん検診で便潜血陽性の判定を受けた方は、近隣の医療機関をご紹介します。

 目 次

Q1. 大腸がん検診(便潜血検査)では何が分かりますか?
Q2.大腸とはどのような臓器ですか?
Q3.便潜血検査で糞便を上手に採取するコツはありますか?
Q4.便潜血陽性になる人の割合はどのくらいですか?
Q5.便潜血陽性だと大腸がんの可能性が高いですか?
Q6.便潜血陽性でしたが精密検査を受ける必要がありますか?
Q7.便潜血陽性でしたが、痔が影響しているのではありませんか?
Q8.大腸がん検診はどのくらいの人が実施していますか?
Q9.大腸がんに自覚症状はありますか?
Q10.大腸がんの患者さんは多いですか?

Q1.大腸がん検診(便潜血検査)では何が分かりますか?

 便潜血検査では、大腸からの出血が分かります。
 最近の便潜血検査は、ヒトの血液(ヘモグロビン)にのみ反応する抗体を利用した、糞便中のヒト血液の有無を検出する免疫学的方法です。そのため、食事(お肉やお魚)の影響を受けません。さらに、上部消化管(食道や胃など)から出血した場合は、消化液によってヒトヘモグロビンが変性してしまうため、大量に出血しない限り糞便中にヒトヘモグロビンは検出されません。そのため、便潜血陽性は大腸からの出血を意味します。
 便潜血検査で知りたいのは大腸がんです。便潜血検査により、大腸がんの30%以上が発見できるとされ、そのうち70%は早期がんです。

Q2.大腸とはどのような臓器ですか?

 食べ物から水分やミネラルを吸収して、糞便を作る臓器です。
 大腸の長さは約1.5メートルで、口側から盲腸、上行結腸、横行結腸、下行結腸、S状結腸、直腸で構成されています。大腸では、食べ物から水分やミネラルを吸収しながら、筋肉の蠕動(縮んだり膨らんだりすることを繰り返す)運動により、糞便にして肛門に向かって移動させます。

Q3.便潜血検査で糞便を上手に採取するコツはありますか?

 便潜血検査では、採便器で糞便を広く、まんべんなくこすります。
 糞便中に含まれる血液は、糞便の一部のみにあることが多いので、採便器で広く、まんべんなく、採便器の溝が埋まるくらいこすります。採便量は多すぎて少なすぎても、正確な結果が得られません。 採便後の容器を室温に保管しておくとヒトヘモグロビンが変性してしまいます。採便から3日以内(前日分と当日分)に提出してください。

Q4.便潜血陽性になる人の割合はどのくらいですか?

 大腸がん検診で、便潜血検査が陽性になる人の割合は5%前後です。
 一般的な便潜血検査は、大腸がんが増加する40歳以上を対象に実施します。便潜血検査を受けた人のうちで、1回でも便潜血検査が陽性になる人の割合は5%前後とされています。どのような人を対象に検査を行うかで陽性率は大きく変化します。そして、便潜血陽性の人に精密(大腸内視鏡)検査を行ってみると、最も多いのは「正常」です(→Q5)。

Q5.便潜血陽性だと大腸がんの可能性が高いですか?

 1回のみの陽性では大腸がんの可能性は高くありませんが、2回とも陽性の場合は大腸がんの可能性が高くなります。
 対象にする人や解析の方法によって異なりますが、1回のみの便潜血検査が陽性の人に精密(大腸内視鏡)検査をして、実際に大腸がんが見つかるのは5%程度とされています。一方、2回の便潜血陽性の人は、40%程度に大腸がんが見つかり、その半数が進行癌とされています。便潜血検査が陽性の場合には、精密(大腸内視鏡)検査をすることを強くお勧めします。(山地 裕ほか. 日消がん検診誌. 2017;55:666-675.)

Q6.便潜血陽性でしたが精密検査を受ける必要がありますか?

 はい、精密検査を強くお勧めします。
 1回のみの便潜血陽性の人の5%程度、2回とも便潜血陽性の人の40%程度に大腸がんが見つかるとされています(→Q5)。便潜血陽性の方の中に、大腸内視鏡検査をためらう方がいますが、それでは大腸がん検診の意義がありません。大腸内視鏡検査をして、大腸がんだったとしても、その多くが早期がんです。躊躇して時間が経てば、がんが進行する可能性があります。そのため、可能な限り速やかに大腸内視鏡検査を受けることをお勧めします。
 早期の大腸がんであれば、内視鏡手術により大腸がん5年生存率は90%以上ですが、進行すれば開腹手術が必要になり5年生存率は低下します。全てのがんの鉄則は、早期発見治療です。

Q7.便潜血陽性でしたが、痔が影響しているのではありませんか?

 痔の出血で便潜血陽性になる可能性はありますが、それでも精密検査をお勧めします。
 痔による肛門からの出血は、糞便内に混入することは少なく、視認できる血液として糞便表面に部分的に付着する場合が多いです。便潜血検査(1日法)の大腸がん発見に対する意義を調べるために日本人7万人を対象に行った検討では、痔がある人とない人での便潜血陽性率は4.6%と4.2%であり、大腸がん検診での便潜血陽性の意義は変わらないとされています(日高久光ほか. 日消集検誌. 1992;94:18-23)。つまり、便潜血陽性であれば、痔の有無にかかわらず、精密(大腸内視鏡)検査をすることを強くお勧めします。

Q8.大腸がん検診はどのくらいの人が実施していますか?

 無料で受けられることもある大腸がん検診ですが、実施率は30%未満です。
 大腸がん検診は、早期がん発見のための有用な検査ですが、40歳以上の日本人の大腸がん検診受診率は30%未満です。一方、米国での(無償で実施可能な大腸内視鏡検査とあわせた)大腸がん検診受診率は約70%です。そして、2016年の大腸がんの国別の年齢調整別率死亡率は、10万人当たりで、日本人男性14.7人/女性8.6人、米国人10.1人/7.0人、と日本人の死亡率が高くなっています。これは、大腸がん検診の受診率に関係があると考えられています。どなたでも、機会があったら大腸がん検診をうけることをお勧めします。

Q9.大腸がんに自覚症状はありますか?

 ほとんどありません。
 早期の大腸がんでは自覚症状はほとんどありません。一方、進行癌では、排便および糞便に関連する症状(下痢や便秘、下血や血便や便が細くなるなど)や体重減少などがあります。早期の大腸がん発見には検査をすることが重要です。

Q10.大腸がんの患者さんは多いですか?

 はい、大腸がんの発生率は全てのがんの中で1位です。
 2019年の統計によれば、大腸がんの発生率は、男性では肺がんに次いで2位、女性では1位です。大腸がんになる人は男性も女性も増加傾向です。生涯で大腸がんになる人は、男性で10人に1人、女性で13人に1人です。

第1版 2022年9月10日

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