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咳喘息/アトピー咳嗽

はじめに
咳嗽(がいそう、以下、咳)は、空気の通り道である気道内に溜まった分泌物や吸い込まれた異物を体外に追い出すことによって体を守る、大切な反応のひとつです。そのため、咳を抑えることは必ずしも良いことではありませんが、気道が極端に敏感になること(過敏性亢進)により咳が止まらなくなってしまうことは、患者さんの肉体的・精神的な大きな負担となります。

夜間の咳の発作で眠れない、人混みで咳が止まらない、接客業のため咳をすると嫌がられるなど、長引く咳は、患者さんの生活の充実度を大きく低下させる原因になります。ツノクリでは、長引く咳で困っている患者さんが、少しでも早く、確実に改善できるように、 薬で治療する方法を提案します。ツノクリでは、皆さんにとって大切なことは、お薬を飲むかどうかではなく、元気で充実した毎日を送ることだと思っています。

Q1.咳はどうして出るのですか?

脳から咳をするように命令が出ます。

一般的に、咳が出るメカニズムは大きく二つに分けられ、①気道の刺激が脳に伝わり、脳から咳をするように命令が出る場合②気道の一部である気管支が狭くなったことが脳に伝わり、脳から咳をするように命令が出る場合があります。

Q2.咳が続いている期間は大切ですか?

はい、とても大切です。

咳は、続いている期間によって、3週間までの「急性」(→Q6)、3から8週間までの「遷延性(せんえんせい)」、8 週間以上の「慢性」に分けられます。この分け方は、咳が出る皆さんの診断や治療を選択する際にとても大切になります。3週間までの急性の咳の主な原因は感冒をはじめとする感染症ですが、特に咳の症状が8週間を超えてくると感染症とは異なる原因を探す必要があります。

ツノクリでは、長引く咳の目安を4週間(1か月)程度と考え、長引く咳として本格的に治療するかの判断材料にします。そのため、咳の症状を訴える患者さんには、いつから咳が出始めたのか、必ず聞きます。咳が出ている皆さんの適切な診断と治療をするために必要な質問ですから、いつから咳が出ているのかを思い出してください。

Q3. 長引く咳にはどのような原因がありますか?

最も多いのは、咳喘息(→Q7)です。

日本における調査では、胸部レントゲン写真と胸部聴診所見に異常が見られない慢性の咳の原因として、咳喘息(35-60%程度)が最も多いとされ、次にアトピー咳嗽(→Q9)が多いとされています。他には、胃食道逆流症(→Q10)、慢性閉塞性肺疾患、副鼻腔気管支症候群(→Q11)などがあり、原因が分からないものも5-10%程度あります。

〇 長引く咳の原因と治療薬

 

咳喘息

アトピー咳嗽

胃食道逆流症

頻 度

35-60%

15-30%

約5%

治療薬

気管支拡張薬

- -

内服ステロイド薬

-

吸入ステロイド薬

-

抗ヒスタミン薬

-

-

ロイコトリエン拮抗薬

- -

プロトンポンプ阻害薬

- -

効果判定期間

2週間

2から4週間

8週間

Q4.長引く咳はどのように診断をしますか?

診断を確定するのはとても難しく、治療的診断という手法を取る場合が多いです。

長引く咳(遷延性と慢性の咳)は、一部の専門施設では様々な検査を利用することによって確定診断することもできますが、ほとんどの施設では治療的診断という方法を取ります。診断的治療とは、長引く咳の原因の頻度(→Q3)や、患者さんの年齢や症状に基づいて、診断を想定して治療を開始することです。

ツノクリでも、長引く咳の確定診断をつけるために地域の中核医療機関を紹介する頻度は少なく、診断的治療として、まずは咳喘息(→Q7)に準じた治療をすることが多いです。ツノクリでは、長引く咳によって肉体的にも精神的にも参っている患者さんには、なるべく咳を減らしてあげることを優先しても良いと考えています。

Q5.治療的診断のためには、どの程度の期間が必要ですか?

咳喘息(→Q7)が疑われる場合には、まず、しっかりと2週間のお薬を続けてみて下さい。

咳喘息が疑われる場合には、気管支拡張薬が有効で、2週間の治療によって効果の判定をします。もし、改善がみられない場合には、アトピー咳嗽(→Q9)への治療に変更して、改めて2から4週間の治療を行ったうえで、効果を判定することもあります。

Q6.急性(3週間まで)の咳にはどのような原因がありますか?

一般的には、感染症による咳が多いとされています。

急性の咳は、感冒をきっかけに出始める患者さんが多いのが特徴です。咳の強さ(回数や持続時間)やつらさが落ち着いてきているようであれば、積極的な治療を必要としない場合は必要ありません。ただ、咳の強さや辛さが持続する(悪化する)ようであれば、胸部レントゲン検査をすることをお勧めします。特別な病原体(マイコプラズマ、肺炎クラミジアもしくは百日咳菌)に感染していると考えられる場合には、抗生物質を内服する必要があります。

ツノクリでは、マイコプラズマ、肺炎クラミジア、百日咳の感染を疑っても、その必要性から、病原菌の特定する検査を積極的には行っていません。その理由の一つは、いずれの病原菌に対しても、マクロライド系もしくはニューキノロン系抗生物質を使って治療するためです。

Q7.咳喘息とはどんな病気ですか?

症状は長引く咳のみで、喘息の治療薬が有効な病気です。

咳喘息は喘鳴(ヒューヒューなど)や呼吸困難を伴わない長引く咳が唯一の症状で、喘息の治療薬が効くことから、咳喘息と呼ばれています。

咳に痰を伴うことは少なく、就寝時、深夜もしくは早朝に悪化しやすく、季節による影響をうけることもあります。成人では女性に多く、感冒を含む上気道炎、冷気、運動、喫煙(受動喫煙も含む)、雨や湿度、花粉や黄砂の飛散などによって症状が悪くなる場合があります。

咳喘息治療の第一選択薬は吸入ステロイド薬です。症状が強い場合には、ロイコトリエン拮抗薬や吸入長時間作動性β刺激薬を併用します。

ツノクリでは、咳喘息が疑われた場合には、吸入ステロイド+長時間作動性β刺激薬であるレルベアとロイコトリエン拮抗薬であるモンテルカストを併用する場合が多いです。咳の発作によって、どうしても夜間眠れないような場合には、発作時に使用する吸入短時間作動性β刺激薬を併用することもあります。

Q8.咳喘息は再発しますか?

はい、約3割の患者さんで2年間以内に咳喘息の再発がみられます。

咳喘息は2年間で3割の患者さんが再発することが知られ、吸入ステロイド薬での治療を2年間にわたり継続することが望ましいとされています。ただ、症状が落ち着いたのに2年間にわたり通院して治療を続けるのは難しいのも確かです。

ツノクリでは、初発の咳喘息患者さんで、かつ治療によって8週間以内で改善した場合には、吸入ステロイド薬中止のお話をしています。しかし、咳喘息を繰り返す患者さんには長期(年単位)の吸入ステロイド薬の使用をお勧めしています。成人の咳喘息患者さんの3割前後が、気管支喘息に移行するという報告もあり、吸入ステロイド薬の長期使用により、移行を防ぐ効果もあるとされています。

Q9.アトピー咳嗽(がいそう)とはどんな病気ですか?

のどの掻痒感(イガイガ)による長引く咳が特徴で、アトピー素因と関連した病気です。

アトピー咳嗽は、アトピー素因を有する中年女性に多くみられ、就寝時、深夜もしくは早朝に悪化しやすい、のどの掻痒感(イガイガ)を伴う乾いた咳が特徴です。エアコン、たばこの煙(受動喫煙)、会話(電話)、運動、精神的緊張などがきっかけになって発作が起きることがあります。第一選択薬は、抗ヒスタミン薬ですが、その有効率は60%前後とされています。改善が見られない場合には、吸入ステロイド薬を追加します。

ツノクリでは、アトピー外装が疑われた場合には、まずは抗ヒスタミン薬を処方しますが、咳喘息と区別がつかないことも多く吸入ステロイドと長時間作動性β刺激薬であるレルベアを併用する場合が多いです。それでも改善しない時には経口ステロイド薬を使用することもありますが、その際は、まず地域の中核医療機関で検査をすることをお勧めします。

Q10. 胃食道逆流症とはどんな病気ですか?

胃酸や食べ物が胃から食道に逆流する病気です。

胃食道逆流症は、胃酸や食べ物が胃から食道に逆流することによって食道が刺激されたり、さらに逆流してのどにまで達したりすることがあります。それらの刺激が繰り返されることにより、脳から咳をする命令が出されることで、長引き咳をもたらします。胃食道逆流症による長引く咳は、会話、起床、食事などによって悪化し、患者さんの63%に「胸やけ」がみられます。上部消化管内視鏡は、診断の手助けにはなりますが、必ずしも確定診断には至りません。

ツノクリでは、胸やけを伴う長引く咳がみられる場合には、胃食道逆流症を疑いプロトンポンプ阻害薬を使用します。ただ、治療効果の判定には8週間ほどかかることから、同時にもしくは途中から、咳喘息に準じた治療を併用することもあります。

Q11.副鼻腔気管支症候群とはどんな病気ですか?

上気道と下気道の炎症を併発して、慢性的に繰り返す状態です。

副鼻腔気管支症候群は、上気道炎である慢性副鼻腔炎に、下気道炎である慢性気管支炎、気管支拡張症、もしくはびまん性汎細気管支炎を合併した病態です。副鼻腔気管支症候群は、本邦での長引く咳の原因として3番目(7-15%)に多く、下の診断基準の(1)から(3)の全てを満たしたものを指します。マクロライド系抗生物質(エリスロマイシン600mg/日)の長期(少なくとも6か月間)の投与によって改善が見込めます。

副鼻腔気管支症候群診断基準

  1. 8週間以上続く呼吸困難発作を伴わない湿性咳嗽
  2. 次の所見のうち一つ以上を認める場合
    1. 後鼻漏、鼻汁、咳払いなどの副鼻腔炎を疑わせる症状
    2. 敷石状所見を含む口腔鼻咽頭における粘液性あるいは粘膿性の分泌液
    3. 副鼻腔炎を示唆する画像所見(CT検査)
  3. マクロライド系抗菌薬や去痰薬による治療が有効

第一版 2021年07月01日

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