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尿検査(蛋白尿、尿潜血)ついて

はじめに

 おしっこ(尿)は、日々の健康状態や生活環境によって変化します。その、日々の健康に関する情報を提供してくれる尿を、検査に利用しない手はありません。さらに、尿検査は、血液検査や画像検査と異なり、痛みや辛さも伴わない安全、かつ安価で簡便な検査です。そのため、広く健康診断や病院などで行われていますが、その結果を解釈するのはとても難しいのも事実です。
 ツノクリでは、尿蛋白と尿潜血に注意しています。尿蛋白陽性の患者さんはもちろん、糖尿病の患者さんも定期的な尿検査をお勧めしています。尿蛋白陽性の患者さんでは、自覚症状がなくても、食事や運動指導だけでなく、腎機能の悪化を防ぐお薬を飲むことを提案することがあります。一方で、壮年および老年の男性での尿潜血陽性は、膀胱癌を見逃さないために、専門医での悪性腫瘍の精密検査をお勧めしています。尿検査は簡便な検査ですが、将来の腎臓の病気を予測する大切な検査です。健康診断などで、定期的に実施することをお勧めします。

尿検査と正常値

・尿比重(正常値:1.010~1.030):尿の重さ(密度)を調べます
・尿pH値(正常値:pH5.0~7.5):尿の酸性やアルカリ性の程度を調べます
・尿 糖(正常値:-マイナス):尿中のブドウ糖の量を調べます
・尿蛋白(正常値:-マイナス):尿中の蛋白質の量を調べます
・尿潜血(正常値:-マイナス):尿中の血液の量を調べます
・尿ウロビリノーゲン(正常値:±プラスマイナス):尿中のウロビリノーゲン(主に肝臓の病気)の量を調べます

 目 次

Q1.一般的な尿検査では何が分かりますか?
Q2.尿比重とは何ですか?
Q3.尿比重(尿の濃さ)で何が分かりますか?
Q4.尿のpH(ピーエイチ)とは何ですか?
Q5.尿のpHで何が分かりますか?
Q6.尿蛋白で何が分かりますか?
Q7.尿蛋白(±)でしたが、尿蛋白陽性ですか?
Q8.血液検査での腎機能は正常でも、尿蛋白陽性は問題ですか?
Q9.学校(高校生以上)健診で尿蛋白陽性でしたが、問題がありますか?
Q10.尿が泡立ちましたが、蛋白尿でしょうか?
Q11.尿潜血で何が分かりますか?

Q1.一般的な尿検査では何が分かりますか?

 一般的な尿検査では、尿の性状や混ざっているものが分かります。
 広く簡易検査として利用されている尿試験紙法では、尿の比重とpH、尿の中に含まれている蛋白質、糖、ケトン体、潜血、ウロビリノーゲン、ビリルビン、白血球、亜硝酸塩などが分かります。
 ツノクリでの尿試験紙法では、尿の比重とpH、尿の中に含まれている蛋白質、糖、潜血、ウロビリノーゲン、白血球のみが分かります。

Q2.尿比重とは何ですか?

 尿比重とは、尿の濃さのことです。
 尿比重は、尿の密度(単位体積当たりの重さ)と、液体での基準密度となる4℃での水の密度との比です。4℃での水の密度は1.0g/cm3と定められているため、尿の比重は密度と等しくなります。簡単に言えば、尿比重とは、尿の水と比べた濃さのことです。
 尿比重の正常値は1.010~1.030程度です。血液中の水溶成分を含む血漿の比重が1.010のため、尿比重が1.010の場合を等張尿(とうちょうにょう)と呼びます。尿比重は、水分を大量に摂取すると低く(尿が薄く)なり、水分を摂取しないと高く(尿が濃く)なります。

Q3.尿比重(尿の濃さ)で何が分かりますか?

 尿比重で、腎臓の尿を濃くする能力が分かります。

 腎臓では、まず、原尿と呼ばれる、血液をろ過して血液中の老廃物や余剰物質を混ぜた尿が作られます。そして、必要な水分や溶質などを再吸収します。腎臓の尿を濃くする能力が低下すると、尿比重は等張尿(血漿の比重と同じ1.010前後)に近づいてきます。そのため、尿比重が等張尿の場合には、腎臓の能力が低下している可能性があります。
 尿比重が高い(尿が濃い)場合には脱水の可能性があります。一方で、前述の理由から、尿比重が低い(尿が薄い)からといって脱水ではないとは言えません。高齢者では、腎臓の尿を濃くする能力が低下しているため、脱水になっても尿比重が高く(尿が濃く)ならない場合があるからです。

Q4.尿のpH(ピーエイチ)とは何ですか?

 尿のpH値とは、尿の酸性もしくはアルカリ性の程度です。
 pH値は、中性(酸性でもアルカリ性でもない状態)を7として0~14で示されます。pH値が7未満を酸性と呼び、低いほど酸性が強く、pH値が7より高い場合をアルカリ性と呼び、高いほどアルカリ性が強いことを示しています。
 尿のpH値は、血液のpH値を一定に保つために大きく変動します。腎臓の能力が低下すると、尿を産生にする能力が低下します。さらに、食事やお薬、尿路感染症などでも変化します。

Q5.尿のpHで何が分かりますか?

 尿のpH値は、尿路結石の性状を推測する時に参考になります。
 尿のpH値によって、できやすい尿路結石が違うため、尿路結石の性状を推測することができます。主な尿路結石の性状と割合は、リン酸もしくはシュウ酸カルシウム結石70~80%、リン酸マグネシウムアンモニア結石10~15%、尿酸結石5~10%、とされています。尿のpH値が6未満では尿酸結石の可能性が高く、7.5以上ではリン酸カルシウムもしくはリン酸マグネシウムアンモニウム結石の可能性が高くなります。
 尿路結石発作を繰り返し、かつ尿pH値が常に6.0未満の場合には、尿酸結石が原因と考えられます。繰り返す尿酸結石発作の予防には、体内で尿酸の合成を抑えるお薬(アロプリノールやフェブキソスタット)や、尿をアルカリ性に変化させるお薬(クエン酸カリウム・ナトリウム)が有効です。

Q6.尿蛋白で何が分かりますか?

 尿に含まれる蛋白質の量は、病気の診断や腎臓の能力を予測する時に参考になります。
 ヒトにとって蛋白質は筋肉や内臓を構成する大切な材料です。そのため、尿蛋白(-)、つまり、尿中には蛋白質がほとんど検出されないのが正常です。一般的な尿試験紙法による尿蛋白陽性の目安は、(1+)で30mg/dL以上、(2+)で100mg/dL以上であり、健康診断で尿蛋白陽性((1+)以上)になる人は5%前後です。
 尿蛋白陽性は、さまざまな原因により、腎臓の機能が障害されている可能性を示しています。尿蛋白陽性の原因として、若年者では慢性糸球体腎炎が、壮年や老年者では糖尿病性腎症や(高血圧症による)腎硬化症が多いとされています。さらに、尿蛋白は、将来の末期腎不全(継続的な血液透析の導入)を強く予測します。健康診断をした沖縄県民10万人を対象とした研究では、尿蛋白陽性の人たちが、10年後に末期腎不全になる危険性は、尿蛋白陰性の人たちの約15倍であることが分かっています。
 一方で、蛋白尿が1g/日までは、生理的(機能的)尿蛋白(病気でないのに蛋白尿陽性)の可能性があります。これには、起立性蛋白尿、熱性蛋白尿、運動性蛋白尿などが含まれます。健康診断で蛋白尿陽性を指摘された場合に、起立性蛋白尿や運動性蛋白尿を否定するために、(起床直後や安静直後の)早朝尿検体を利用する方法もあります。

Q7.尿蛋白(±)でしたが、尿蛋白陽性ですか?

 いいえ、尿蛋白(±)は、広い意味では尿蛋白陰性の扱いになります。
 尿蛋白(±)の人たちが、将来、末期腎不全(継続的な血液透析の導入)に至る可能性は、尿蛋白(-)の人たちと差が無いことが分かっています。そのため、尿蛋白(±)のみで精密検査をする必要はありませんが、定期的な尿検査をすることをお勧めします。

Q8.血液検査での腎機能は正常でも、尿蛋白陽性は問題ですか?

 はい、尿蛋白陽性は将来の末期腎不全を強く予測します。
尿蛋白陽性は、血液検査での腎機能が正常でも、将来の末期腎不全を強く予測(→Q6)します。とくに、糖尿病患者さんにおいて、初期の腎機能障害を察知するのは尿蛋白です。糖尿病による腎臓の機能障害は、糖尿病性腎症と呼ばれ、わが国での透析導入される患者さんの4割を占めています。
 糖尿病性腎症の特徴として、無症状の蛋白尿が徐々に増加し、血液検査で腎機能障害が認められると、急激に腎機能障害が進行することが分かっています。そのため、初期の蛋白尿を察知し、できるだけ蛋白尿を増加させないことが大切です。定期的な尿検査によって、蛋白尿の程度を把握すると同時に、良好な血糖値と血圧値を保ち、腎機能の悪化を防ぐお薬を飲むことを提案することがあります。

Q9.学校(高校生以上)健診で尿蛋白陽性でしたが、問題がありますか?

 はい、尿蛋白陽性は精密検査の対象となります。
 学校健診での尿蛋白陽性は、精密検査が必要です。一般的には、再度の正確な尿検査に加えて血液検査を行います。その結果、異常所見が、蛋白尿陽性のみの場合は、体位性蛋白尿もしくは無症候性蛋白尿が9割とされています。
ツノクリでも学校健診での蛋白尿陽性の精密検査はできますが、長い期間に渡り経過を観察をする場合があることから、地域の中核病院での検査をお勧めします。

Q10.尿が泡立ちましたが、蛋白尿でしょうか?

 いいえ、尿の泡立ちは、必ずしも蛋白尿ではありません。
 尿中の蛋白質が多いと、尿の表面張力が増し、尿が泡立ちやすいことが分かっています。しかし、尿の泡立ちは、尿が濃い場合にも認められることがあり、必ずしも尿蛋白陽性となりません。尿の泡立ちがあり、実際に尿蛋白陽性になる人は20%前後とされています。

Q11.尿潜血で何が分かりますか?

  尿に含まれる潜血は、病気の診断や腎臓の能力を予測する時に参考になります。
 尿潜血陽性の場合は、血尿、ミオグロビン尿、ヘモグロビン尿の可能性があります。尿中に赤血球が含まれている場合の尿試験紙法での尿潜血(1+)は、尿沈渣での5個/HPF(顕微鏡視野400倍に赤血球が5個)以上と決められており、血尿の診断になります。健康診断で尿潜血陽性((1+)以上)となる人は10%前後です。ただし、女性の尿潜血陽性は、生理と尿路感染症によるものが含まれており、それらを除くと5%前後とされています。
 尿潜血陽性の原因として、尿路感染症(13%)、腎臓病(10%)、尿路結石(4%)、による血尿などが挙げられますが、なかでも鑑別すべきは尿路(腎臓、尿管、膀胱、尿道)の悪性腫瘍(5%)です。特に、はっきりわかる血尿の20%前後が悪性腫瘍とされ、そのほとんどが膀胱癌です。膀胱癌は、40歳以上の男性に多く、喫煙者は非喫煙者の1.8倍とされています。
 ツノクリでは、40歳以上の男性で血尿がみられた場合には、泌尿器科専門医に受診することをお勧めしています。一方で、さまざまな理由で受診できない場合でも超音波検査と尿細胞診は実施することをお勧めしています。

第1版 2022年8月14日

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